新社長に聞く/JFE商事エレクトロニクス/海老名邦英氏/新規事業成長へ積極投資

新社長に聞く/JFE商事エレクトロニクス/海老名邦英氏/新規事業成長へ積極投資
 ――エレクトロニクス市場は大きな変革期を迎え、規模が拡大している。トップとして事業の成長に向けた抱負を。

 「2025年度から中期経営計画を進め、実装機器や産業用洗浄機を販売するFS(ファクトリー・ソリューション)と専用集積回路やカスタム半導体ウエハー販売DS(デバイス・ソリューション)の2本柱に加え、『三本の矢』とすべく、DX(デジタルトランスフォーメーション)事業を育てる。事業ポートフォリオの強化に取り組み、既存事業の収益強靭化とともに積極に投資し成長市場に進出する。柳澤孝彰前社長の路線を引き継ぎ、事業の拡大策に取り組んでいく」

 ――25年度の成果を踏まえ、26年度に取り組む重点テーマは。

 「25年度はマーケットの好調が続き、経常利益は期初計画を25%上回った。FS事業は、中国で電子部品をプリント基板に実装する実装機の販売が伸びている。2月の中国出張の際にEVに乗ったが、フル自動運転で目的地への制御を会話で行っていた。日本製のEVに比べ制御電子基板が3倍搭載されているという。EVの市場が堅調な上に進化が非常に速い。新興企業が次々と立ち上がり、実装機の世界市場は数年前の年3500億―3600億円から25年度に5000億円を超えたと言われる。米国との摩擦もあって中国は自国で技術を確立しようとし、企業が実装機を購入している。データセンター関連などの需要も増え、中国事業は当社の稼ぎ頭となっている」

 ――FS事業の主力の一つで、小型金属部品など加工後の油を炭化水素系の洗浄剤で洗い落とす洗浄プロセス事業は。

 「洗浄プロセス事業は中国、タイ、ベトナム、マレーシアの日系向けが中心であり、苦戦している。炭化水素系洗浄剤を供給し続けるビジネスは限界があるので、使用済みの洗浄剤を再生利用するビジネスに乗り出す。溶剤リサイクルを手掛ける豊田化学工業、タイの洗浄剤販売業のユニオンペトロケミカルと3社で連携し、産廃処理されている廃液をリサイクルする。タイに合弁会社を設立し、工場を建設中で9月中旬に操業を始める。将来はタイでの第2工場建設やベトナムなどでの展開を構想している」

 ――DS事業の成長戦略は。

 「海外、特に中国、台湾で新規の受注を獲得しようと営業活動を進めている。海外の企業とライセンス契約を結び国内外に拡販するとともに、海外で投資を行う計画だ。パートナー企業と連携して、回路設計したウエハーをお客さまに提供したり、ウエハーを切ってパッケージにして電子デバイスとして納めている。半導体の最先端技術を持つ米国企業に出資し、製品の製造受託や日本や東南アジアで販売するようなビジネスを実現させたい。米国はGAFAなど巨大な企業が成長を続けている。海外に目を向ける必要がある」

 ――DX事業推進センターの取り組みを。

 「主に三つの事業があり、映像ソリューションと物流DX、レーダ非破壊検査だ。映像ソリューションは、カメラでの映像情報を工場の安全操業や稼働率向上に役立てる。階段の昇降をカメラとAIで監視し、『手すりを持ってください』などと注意を発する。JFEスチールに納めて実績を積み、外販を始めている。反響は多く、DX事業推進センターは27年度の黒字化の計画だが、映像ソリューションは25年度に黒字化した。物流DXは改正物流効率化法と食品衛生法に対応し、トラック積荷の温度と位置情報を把握し記録する新商品『Jiot』を夏場に向けて食品物流に特化してプロモーションする。レーダー非破壊検査は、マンションなど高層建物の壁内部の空隙をレーダー照射で見分ける技術だが、誰でも判別できるよう画像処理を完成させ、AIと組み合わせて事業化する」

 ――市場の先行きをどうみるか。将来の利益目標は。

 「エレクトロニクス分野の好況は、1年半は続くと言われている。データセンターの建設が続き、半導体のメモリーは価格が昨年来何倍にも高騰し、品不足も続いている。新たな商機が次々と起こるので広くアンテナを張り、投資に力を入れていく。JFEグループは35年の長期ビジョンの実現に向かっており、当社も35年度の経常利益は25年度比で3倍を目指し、28年度からの次期中計でも2倍程度を確保できる体制を築いていきたい」

 ――事業成長の鍵となる人材をどう育成していくか。

 「4月に人事制度を刷新した。社員は200人で国内と現地スタッフ含む海外で各100人。一般職をなくして総合職に一本化し、組織を管理し将来の幹部を目指すグローバルコースと専門性を発揮するエキスパートコースを設けた。貢献に応じて評価し、早い段階で高いポジションに登用するなどメリハリをつけ、社員の意識向上を促す。パーパスを制定する予定で6月に候補をそろえて7月に決め、企業と社会の発展に貢献していきたいと考えている」

(植木 美知也)



 ▽海老名邦英(えびな・くにひで)氏=明大工卒、90年川鉄商事入社。エレクトロニクスの事業に一貫して従事し、97年からマレーシアに6年半駐在。通貨危機時、急場をしのごうと開拓した顧客がその後の主力に。12年に上海現地法人の董事長に就き、リスクをとって中国企業向けを開拓した。16年FS営業本部長、18年取締役、22年常務取締役、26年4月社長就任。休日はゴルフとジムで健康管理。座右の銘は「有言実行」。68年2月7日生まれ、静岡県出身。



環境に貢献する企業2026

特集・インタビュー

トップ交代人事

書籍・出版物

サービス

産業新聞のサービス