鉄鋼業界で働く/女性執行役員編/インタビュー/相談される存在へ

鉄鋼業界で働く/女性執行役員編/インタビュー/相談される存在へ
ブリキなどを扱う伊藤忠丸紅鉄鋼系の鉄鋼専門商社・富安(本社=東京都墨田区、田川正之社長)で、同社初となる女性執行役員が誕生した。札幌支店で支店長を務めている伊藤真紀子さんだ。高校卒業から約40年にわたり経理、営業、管理職と多くのことを経験してきた。入社の経緯やこれまでの経験、今後の目標などについて聞いた。

 ――入社の経緯を。

 「高校を卒業したら経理の仕事に就きたいと思っていました。高校の就職担当の先生が当時の浜中支店次長の恩師というご縁で、丸紅資本のある当社の紹介を受け、専門商社という点に魅力を感じて入社を決めました」

 ――当時の環境は。

 「札幌支店の経理課に配属になり、社会人のスタートを切りました。当時は私を含めて女性社員が3人で、職種は経理と営業のアシスタントでした。営業職の男性社員が20人ほどいて、今よりも女性比率は低かったです。その中で経理の仕事を7年務めました」

 ――営業の仕事に携わるきっかけは。

 「女性総合職採用が始まった時期で、外に出て社外の方と接する仕事がしたいと思い、1989年に札幌支店で住設課が新設されるタイミングで手をあげ、社内で初めての女性総合職として営業の仕事をするようになりました」

 ――仕事内容は。

 「集合住宅向けのキッチンやユニットバスなど住設製品を材工で取り扱い、ゼネコンが建築する分譲マンションなどに納めていました」

 ――現場には女性が少なかった。

 「当時ゼネコンの現場にも女性はほとんどいらっしゃらなかったので、先方が気を遣ってくれたことを覚えています。女性の営業は珍しかったようで、すぐに顔を覚えてもらうことができ、そういう意味では大変というよりはプラスに捉えていました。社内でも新規事業の推進という業務を任せていただき、やりがいも感じることができました。もちろん失敗することもありますが、周りに助けられて今があると思っています」

 ――忘れられないエピソードは。

 「営業部に配属されて間もない頃、メーカーの工場からの出荷が間に合わず、納期が大幅に遅れることがありました。メーカーの担当の方と一緒にお客さまのところに謝罪に伺い、ものすごくお叱りを受けました。経験が浅かったのでどうやって納めるのかと心配していたところ、施工店の方を中心に期間内に作業を終えるようにしていただけて、建設に関わっているすべての会社が一つのチームなのだと実感できました」

 ――その後は。

 「2006年に住設機器チーム長になりました。12年には鋼材住設機器チーム長と、このときから鉄鋼業界へ本格的に関わっていくようになりました。それでもゼネコンを相手に営業をしていた経験もあったので、特に抵抗なくなじむことができたと思います。15年に支店長に就任してからはより深く関わるようになりました」

 ――鉄鋼業界の印象は。

 「お酒やゴルフの好きな方が多く、皆さんとてもパワフルです。同業同士の意識が強く、互いにライバルでありながら人の温かさを感じる。互いに切磋琢磨しているイメージです」

 ――管理職として意識してきたことは。

 「一番は会話をすることですね。相手がどんなことを考えているかなど、会話しないとわからないことばかりですから社員の声に耳を傾けてきました。こちらからの話を伝えるときも相手の気持ちになって話し方や伝え方を考え、タイミングを逃さないようにしています」

 ――出産、育児も経験された。

 「90年代半ばに長男を出産して、育児休暇を8カ月程取得しました。当時は制度ができたばかりで、私が社内で初の取得者でした。会社も自分も慣れておらず、周りの方にはご面倒をおかけしたと記憶しています。現在は制度が定着し、他の拠点でも取得する社員も増え、取りやすい環境になってきました。ただ、男性の育児休暇取得については、現状は厳しいと感じています。限られた人員で、代わる人がいないという課題は当社だけではなく、日本全体の課題なのかもしれません」

 ――今後の展望を。

 「富安の札幌支店長は歴代の取締役が務めており重要なポジション。執行役員に就任したことで部下のモチベーションアップにつながればと考えます。昨年事務所を移転した際に内部改装をしましたが、今後もさらに社員が働きやすい環境を整備し、新型コロナウイルス後のことを想像しながら業務内容改善に向け取り組んでいきたい。また、男女や所属部署に関わらず、困ったときに相談してもらえるような存在でありたいと思います」

(熊谷 康宏)

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