2023年7月20日

鉄鋼業界で働く/女性営業職編/インタビュー(上)/子供のころから親しみ

九州地方でも鉄鋼業界のさまざまな場面で女性が活躍している。住商メタルワン鋼管九州支店(福岡市博多区、石川真人支店長)鋼管事業・特殊管本部九州商事チームの奥平真由さんもその1人だ。2018年に入社後、佐賀県や福岡県を中心に営業活動に勤しんでいる。学生時代から鉄鋼業界に何となく親しみを持っていたという奥平さんに、就職活動やこれまでの業務内容、入社後の印象などを聞いた。

――入社までは。

「兵庫県姫路市出身で、幼い頃に作業療法士の方にお世話になった経験などから関西学院大学人間福祉学部に進みました。児童相談所、行政関係、老人福祉などについて学び、就職に関してはさらに広い視野を持とうと、銀行やハウスメーカーなど業界を問わず受けましたね。地元から出ることにあこがれていて、ダーツの旅のような全国転勤を志望していました。せっかくなら営業でいろんな人に会う仕事がしたいな、とも。住商メタルワン鋼管は、最終面接までの面接官が『一緒に働きたいな』と思える方々だったのが決め手で入社しました」

――業界に親しみが。

「姫路市には日本製鉄瀬戸内製鉄所広畑地区があるほか、同系列の製鉄記念広畑病院(22年に統合し閉院)にかかったこともあって名前をよく知っていましたね。ちなみに祖母も同じ病院でパートをしていたんですよ。中学で剣道部に所属していた時には、山陽特殊製鋼の現業職の方が指導に来ていて。剣道に向き合いたい私のために、警察署の道場や剣道の集まりに呼んでくださりました。学生時代に関わった大人の方に鉄鋼業界の関係者が多く、身近とまではいきませんが、親しみを持っていましたね。そんなこともあって、就職でゼロから知るという感じではなかったです」

――初の女性配属。

「2018年に入社後、配管機材本部鳥栖配管チームに配属になりました。当時は、売り物がパイプでどこに使われているのかを会社案内で漠然と知っていた程度でした。女性総合職が初任地で九州に行くのは初だったそう。そしていざ赴任すると、鳥栖のメンバーの中で女性総合職自体が私だけで、来てから知ってびっくりしました(笑)。たまたま同じマンションに先輩が住んでいたのですが、『地元以外から新入社員が来るのも、女性総合職が来るのも初めて。みんなどうしたら良いか分からない』と仰っていましたね。年齢が一番近い先輩が一回り上と離れていることもあって、鳥栖に同世代はいるのかな、話は合うかな…と多少の不安がありました。売り物が鉄で男性社会なので、きつい言い方をする人もいるんじゃないかなと思っていましたね」

――その後は。

「同行営業を経てプラント向けの店売りとひも付きを担当し、佐賀や久留米、鳥栖、サブで熊本や九州南部を回っていました。最初は方言が分からなくて戸惑うこともありましたね。言葉の端々に驚くことも。ただ関西ほどケチケチしていないなと思いましたね。地域性もあるのか、思っていたよりも皆さん優しく感じました。柔らかいという表現の方が合っているかもしれません。もっと値切られるかと思ったけどそうじゃないし、時間を掛けた分振り向いていただけるなと。無下にされることもなくて、環境に恵まれているなと感じましたね」

――社内での様子を。

「課長が父親の少し上くらいの年齢で、娘のように接してくれました。関西から来たのもありますし、初の一人暮らしだったからか、仕事はもちろん生活面でも『慣れたか?』と定期的に聞いてくださいましたね。同僚は、飲み会などよく遊びに連れて行ってくださいました。今はすっかり九州に慣れましたよ。住み続けたいくらい(笑)」

――働いて感じるギャップは。

「固定電話に触れる習慣が小学生以来なかったので、保留の仕方が分からなくて焦ったのを覚えています(笑)。注文書やメールを送った後に電話を入れる文化がありますよね。果たしてここまでいるのか!?と最初は思っていました。年齢が上の方も多いですし、特に急ぎの件などは掛けておけば確実なので、今は必要だと感じていますね」

――他には。

「勤めている人口が多い業界だと思うので若い人もそれなりにいるのかなと思っていたのですが、いざ入ってみると全体的に年齢層が高いなと。思った以上に高いです。また、初めはただ鉄のパイプを売るだけと思っていましたが、入社してみるとステンレスやカーボンなどものすごく種類が多くて驚きました」

――ユーザーとの付き合いが多い。

「最近は新型コロナウイルスが落ち着いたこともあってか、会食の場が増えてきて、お客さまとの関係強化に努めています。ただ、翌日の二日酔いだけは体力的にどうしようもできませんね。ある意味、解決しようのない苦労かもしれないです(笑)」(芦田 彩)



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