「4―9月期は需要家の理解を得ながら、前下期以降のコストアップ分を製品販売価格に反映させるよう努めてきたが、タイムラグが生じたため、営業損益と経常損益で赤字を余儀なくされた。24年から鋼材出荷数量が減り、売上高も減少していたものの、上期では3年ぶりにそれぞれプラスに転じてきている。国内全体で建築とくに非住宅向けで回復傾向がみられ、製品販売価格を引き上げたにも関わらず当社の受注は堅調。需要の回復が背景とみられ、先行き明るい兆しを感じる」
「7―9月期の営業損益は4―6月期に比べて10億5000万円改善した。これは異形棒鋼をはじめ国内の電炉鋼材需要が減少したため、鉄スクラップの使用量が減り、今夏で鉄スクラップ価格の一服感が出たことが大きい。下期はH形鋼を主体に条鋼品種が堅調に推移するほか、AD調査で輸入鋼材から当社製品への代替も想定され、鋼板品種も回復してくるとみている。結果、国内における資源循環の進展にも寄与できると考えている」
――薄板、厚板の鋼板品種の市場環境を。
「薄板は国内、海外ともに引き合いが増えている。とくにCBAM(炭素国境調整措置)を発令した欧州向けの輸出が増えている」
――条鋼品種は。
「これも繰り返しになるが、『建設業の2024年問題』が国内鋼材市場に与えた影響は大きかったものの、ここにきて非住宅建築向け鉄骨受注が増えている。データセンター関連や半導体関連など海外需要家が手掛ける案件では建築規模が大きく、また半導体などはマーケットが急速に変化する分野であり、投資回収を早めるため、比較的に短工期を求める傾向があると感じる。スピード感はありそうで、海外需要家の動きは現場の人手不足など停滞している建設市場への刺激になる可能性がある。一方、一部で中・小規模建築案件も増えているもようで、先行きの動向に期待している」
――26年度以降、製品販売価格の引き上げが続いている。「輸出では鉄鋼製品の輸入規制を行っている国や地域と、実施していない国や地域ではホットコイルなどの価格に差が生じている。国内で販売する価格よりも輸出価格が高い品種もあるが、国内で資源を循環させて国内で低炭素鋼材を供給することがわれわれの使命。急騰している電気料金などのエネルギーコストだけでなく、製造に係るコストは多元的にアップしており、当社の置かれている現状を需要家にしっかり伝え、理解を得ながら、それぞれのマーケット状況をよく聞きながら、販売価格を考えていきたい」
――低CO2鋼材「ほぼゼロ」の状況を。
「カーボンニュートラルへの取り組みとともに、地球環境保全への意識の高まりを受けて、当社の低CO2鋼材『ほぼゼロ』は新規を含めて引き合い・受注が伸長しており、累計販売数量は110件・3万5000トン前後に達した。最終需要家が発注するケースもあり、エンボディドカーボンの少ない鋼材を選ぶ世界が近づいてきている。製造業を主体に需要家との技術ミーティングなどを繰り返した結果、当社製品の品質が一段と高まり、また『ほぼゼロ』だけでなく全製品で納期対応を厳格化し、需要家がより安心して採用できる体制が整いつつある。建設業の需要家では特定の建築案件で使う鋼材で『ほぼゼロ』のH形鋼などを採用する話も出てきている」
――岡山工場の溶融亜鉛めっきラインの改造工事の進捗と、その他の設備投資計画を。
「岡山工場の溶融亜鉛めっきラインは冷延コイルも生産できる兼用ラインにするための改造工事を行っているが順調に進捗している。需要家の期待は大きく、気を引き締めている。岡山改造以外は設備更新投資やシステム導入などである」
――コスト削減の取り組みは。
「『Ⅴ宇都宮』などのスローガンを掲げ、全工場でトン当たり数千円単位の製造コスト削減に取り組んでいるが、中東情勢悪化などの影響でコスト負担が増大しており、電力使用原単位低減などの成果が現れにくくなっている。ただ地政学リスクが解消に向かえばコストダウン施策の効果が発揮されるため、引き続き力を注いでいきたい」
――新技術、新商品開発の進捗を。
「鋼の成分にアルミを転嫁することでフリー窒素を窒化アルミとして安定的に固定して、加工性に優れた熱延鋼板を開発し、特許を取得した。パイプメーカーなどの素材向けでホットコイルを供給しているが、加工性を含めた品質面で高い評価を得ている。酸洗鋼板への適用拡大に向けて製造業の需要家にサンプルを供給しており、早期採用を目指す」
――物流の効率化にも取り組んでいる。
「国内鉄鋼業界では、トレーラーの実車率が低い。当社では実車率を高めるべく、物流の効率化を考えてきたが、関東の湾岸エリア付近では鋼材流通も多く、宇都宮工場から鋼材を輸送した帰りに鉄スクラップを載せて持ってくることが可能な車体開発を検討している」
――鉄スクラップ集荷についてはどうか。「名古屋、関西、東京湾岸、高松のサテライトヤードの集荷数量は順調に増えており、全4地区の合計集荷数量は1つの工場に匹敵する水準に達している。輸出を止めて国内の資源循環を促進するため、建値を提示し、しっかり集める仕組みが構築されてきている。国内で備蓄する機能としても十分発揮している。一方、アマダやエンビプロ・ホールディングスと連携し、使用済み板金加工機械を対象とした鉄資源のサーキュラーエコノミーの取り組みをスタートしており、資源循環と脱炭素の両面で進めている」
――自動用鋼板の状況を。
「トヨタ自動車とともに、他の自動車メーカーとも対話を重ねている。日本自動車工業会は再生鉄、すなわち電炉鋼板の活用促進に向けた取り組みを公表しており、歓迎したい」 ――需要家との協働についてはどうか。
「順調に拡大している。至近では日本トレクスが製造した鋼材輸送トレーラーに『ほぼゼロ』が採用された。また『ほぼゼロ』を母材にした錫めっき鋼板が、三幸商事が製造する缶バッジパーツに採用されている。協議中の案件も増えている」
――オフサイトPPAなどトラッキング付非化石証書の購入以外でのCO2削減策は。
「取引先において太陽光で発電した再生可能エネルギーで使い切れなかった余剰電力分を、当社で活用できないかを検討している」
――小林幸子さんのCSuO任命効果は。
「Youtubeの撮影で先日、一緒に日本通運を訪問するなどアグレッシブに動いていただいている。10月以降で新しいPR展開も実施しており、小林幸子さん効果を期待している」(濱坂浩司)















