2023年12月29日

2023年非鉄十大ニュース

1/JX金属が上場準備、カセロネス鉱山は過半売却

JX金属は5月に株式上場準備を発表した。将来的にはENEOSホールディングスの持分法適用関連会社になる見通しだが事実上の分離・独立となる。JX金属は半導体材料や情報通信材料など川下の先端素材分野をさらに強化する一方、上流のカセロネス銅鉱山は権益の過半を加ルンディン・マイニングに譲渡しマイナー出資になる。製錬事業は精鉱とリサイクル原料によるハイブリッド製錬を目指す。


2/PPCに丸紅が参画

JX金属と三井金属が出資するパンパシフィック・カッパー(PPC)に丸紅が参画する。銅精鉱の購入から電気銅の製造委託・販売まで行う共同事業体が、来年度からJX金属47.8%、三井金属32.2%、丸紅20%の新体制となる。JX金属はロス・ペランブレス鉱山権益の3.27%を、同じく同鉱山の権益を保有する丸紅に譲渡することも決まった。


3/伸銅品需要、46年ぶりの低水準に

日本伸銅協会が9月に発表した見通しによれば、本年度の伸銅品生産量は1975年以来の低水準となる64万7300トンになりそうだ。半導体や建築など伸銅品の主要な需要分野で長引くユーザーの在庫調整が影響。年度内の本格的な需要回復は難しいとの見方も聞かれる。


4/中国がガリウム・ゲルマニウム輸出規制強化

中国政府は8月から半導体材料のガリウムおよびゲルマニウム関連品目の輸出規制を強化した。米国の中国への半導体輸出規制に日欧が同調したため、中国が対抗措置を講じた格好。中国が世界生産の9割超を握るガリウムは、需要家が中国以外の市場で在庫確保を進めたため、国際相場は規制発表前の2倍超に上昇した。


5/国内で鉛の新興リサイクラー台頭

国際的に割安だった国内発生の廃バッテリー(使用済み鉛蓄電池)を狙って、解体した巣鉛を違法輸出する事例が多発。さらに粗鉛(ブリオン)輸出を目的とする新たな鉛精錬工場が各地で稼働し、自治体ごとでバラつきのある環境行政の矛盾が浮き彫りになった。廃バッテリーの集荷競争が激化したことによって、市中価格は過去最高値のキロ120円前後まで値上がりした。


6/国内金価格が初の1万円超え

金は国内外で史上最高値を更新した。ニューヨーク商品取引所(COMEX)では12月4日に初めてトロイオンス当たり2100ドルを突破するなど、約3年3カ月ぶりに最高値を塗り替えた。国内でも田中貴金属工業の店頭小売価格が、税込みグラム1万928円まで値を伸ばした。米利上げ終了観測に伴いファンドの金買いが大きく増加。イスラエルとイスラム組織ハマスとの紛争を背景とした有事の金買いも金価格を押し上げた。


7/アルミ協会がサーキュラーエコノミー委発足

日本アルミニウム協会は6月、アルミの資源循環を推進する「サーキュラーエコノミー委員会」を設置した。軽圧、サッシ、二次合金、スクラップから大手9社が設置時に名を連ねた。展伸材の水平リサイクルを目指し、選別技術や標準確立、生産・流通のネットワーク構築など日本版「グリーンアルミ」の基盤づくりへの包括的な指針を示した。


8/亜鉛製錬の事業見直し相次ぐ

亜鉛製錬メーカーで事業の見直しが相次いだ。東邦亜鉛は豪ラスプ鉱山の閉鎖を11月に発表。既存鉱体は3年ほどで終掘する見込みで、閉山プロセスを進めながら売却も試みる。国内亜鉛製錬事業はリサイクル主体にシフトし、数年で再生原料比率を過半に高める方針を打ち出した。住友金属鉱山は11月、秋田製錬の株式(14%)をDOWAホールディングスグループに売却し、電気亜鉛の委託製錬事業から本年度で撤退すると発表した。


9/非鉄流通の再編続く

非鉄流通の再編が相次いだ一年だった。2月に鉄鋼商社の岡谷鋼機が名古屋の光洋マテリカを連結子会社化。自動車向けの銅製品拡販に弾みを付ける。8月には日軽産業が大阪のアルミコイルセンターのエーシーシーを完全子会社化。西日本の販売力強化につなげる。神鋼商事も10月に伸銅品販売などを手掛ける大阪の稲垣商店を買収した。強みの少量多品種で新規顧客開拓を図る。


10/住友鉱山QB2稼働、銅鉱山投資続く

23年も日本企業が参画する銅鉱山の開業と投資決定が続いた。住友金属鉱山が25%、住友商事が5%出資するチリのケブラダブランカ拡張プロジェクト(QB2)が春にバルク精鉱を初生産し、10月には同国ボリッチ大統領も招き開山式を行った。平均銅生産量は年間24万トンを見込む。丸紅は12月、チリのセンチネラ鉱山の年産量を約14万トン増やす拡張投資を決定。日鉄鉱業は5月にチリのアルケロス鉱山の開発工事着手を決めた。

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