2026年4月3日
創刊90周年記念座談会 広がるアルミ循環/(1)/循環経済の先駆者に
脱炭素社会の実現や資源循環型経済への移行が加速する中、循環型素材の中核としてアルミへの期待が高まっている。近年は、リサイクル性に優れた点が注目され、リサイクル材の活用に向けた水平リサイクルへの取り組みも進む。一方で、スクラップの海外流出や選別を含めたコスト低減、再生材の利用促進などの課題も残る。国内アルミサプライチェーンの強化に何が必要か。関連する有力企業3社と経済産業省による座談会を開催した。
【アルミ業界の過去10年間の変遷】
――2013年にUACJが発足しました。当時から今に至るまでのアルミ圧延業界の変遷からお話しください。
田中「10年代前半はアジア市場に対する成長期待から、アルミ産業への新規参入が相次ぎ競争は激化した。人口減少などで国内市場の需要が伸び悩んだ状況下で、住友軽金属工業と古河スカイが統合しUACJが誕生した。統合によってシェアを大きく伸ばしたものの、18年ごろの米中貿易摩擦による影響で需要が落ち込み、UACJとして構造改革など各種対策を打ってきた。近年は世界的な環境意識の高まりから、リサイクル性に優れた素材としてアルミへの関心が高まっている。24年度の飲料缶回収率は99・8%に達し、水平リサイクル率も75・7%と高い。こうした特性が改めて評価されているアルミは、今後も世界的な需要の成長が期待できる」
――東洋製缶グループも13年にホールディングス体制へと移行しています。アルミ缶材の業界では、どのような動きがありましたか。
本多「製缶業界ではアルミ缶メーカーの買収などが見られたが、私どもの包装容器事業ではアルミが飲料缶のメインである事業構造が継続した。ただ、アルミ缶を主に使用する飲料業界では、残念ながら人口減少の中で消費量が微減傾向にある。飲料の総量が増えづらい一方で、ジャンルの変化は感じる。例えば、アルコール飲料で需要の多かったビールは微減傾向だが、酎ハイなどのレディトゥドリンク(RTD)などが増加傾向にあり、最近の健康志向からノンアルコール飲料も増えてきた。その結果、製缶メーカーの生産は従来の大ロットから小ロット多品種に変わり、缶の印刷も多種多様になった。また、この10年間で環境対応への意識が非常に高まり、飲料メーカーから環境に配慮した技術や新製品の要望が私どもに寄せられ、CAN to CAN拡大への取り組みも進めた。軽量化とリサイクル材の活用推進については、引き続き製缶業界として力を入れていく。以前から缶の胴体には60―70%リサイクル材を使用してきたが、リサイクル材の安定調達ができれば100%も可能だ。缶蓋については開口性や耐圧強度などの性能をしっかり兼ね備える必要があるため、従来はリサイクル材を使うのが難しかった。しかし、現在はUACJとともに缶蓋の技術開発にも力を入れている」
――環境対応の話が出ましたが、リサイクルが近年大きな注目を集めるようになりました。
大賀「20年ごろまでのリサイクル材は、低コスト材としての位置付けが強かった。新地金に添加材を加え、さらにリサイクル材を入れることで溶湯単価を安く抑えるという考え方が一般的だったためだ。とはいえ、スクラップ由来の工程では介在物が生じ、どうしてもドロスが多く出てしまう。低コストだからといって、すぐに皆がリサイクル材を使えるわけではなかった。一方で、SDGsや脱炭素の流れの中で再生材を使うこと自体に付加価値が生じ、資源循環を自社の将来性につなげたいと考える企業も出てきたところから、リサイクル業界が変わってきたと思う」
――政府は循環経済を国家戦略に掲げています。アルミなどの金属業界の重要性をどのように考えていますか。
三牧「サーキュラーエコノミー(循環経済)のトップランナーとしてアルミ業界に頑張ってほしい、というのが国の考えだ。環境政策については経産省や環境省が進めており、どのような形であれば現実的な環境対応が可能かを経産省として模索している。GX(グリーントランスフォーメーション)では、環境対応と経済成長の両立を実行する。昨今、資源高とGXの概念が一致してきた中で、循環経済などの政策目標が明確になってきた。これまで日本は3R(リデュース・リユース・リサイクル)に積極的に取り組んできたが、国内の廃棄物を減らす3Rだけでは再生材の利用がなかなか進まない。今は海外からの資源制約やカーボンニュートラルへの対応が必要で、循環経済と企業の関心とをうまく経済成長につなげていくことが非常に大事だと考える。今までは最終商品の競争力が注目されてきたが、産業の垣根を超えた環境価値や素材の強さを日本経済の成長につなげていくのかを考えるのは、非常に重要なミッションだと思っている」
(藤田章嗣、増岡武秀)
【出席者】
▽田中信二氏(UACJ社長)
▽本多正憲氏(東洋製缶社長〈取材当時〉、現東洋製缶グループホールディングス副会長)
▽大賀丈久氏(山一金属専務)
▽三牧純一郎氏(経済産業省・GXグループ・資源循環経済課長)
司会=増田正則(産業新聞社編集局次長兼非鉄部長)
【アルミ業界の過去10年間の変遷】
――2013年にUACJが発足しました。当時から今に至るまでのアルミ圧延業界の変遷からお話しください。田中「10年代前半はアジア市場に対する成長期待から、アルミ産業への新規参入が相次ぎ競争は激化した。人口減少などで国内市場の需要が伸び悩んだ状況下で、住友軽金属工業と古河スカイが統合しUACJが誕生した。統合によってシェアを大きく伸ばしたものの、18年ごろの米中貿易摩擦による影響で需要が落ち込み、UACJとして構造改革など各種対策を打ってきた。近年は世界的な環境意識の高まりから、リサイクル性に優れた素材としてアルミへの関心が高まっている。24年度の飲料缶回収率は99・8%に達し、水平リサイクル率も75・7%と高い。こうした特性が改めて評価されているアルミは、今後も世界的な需要の成長が期待できる」
――東洋製缶グループも13年にホールディングス体制へと移行しています。アルミ缶材の業界では、どのような動きがありましたか。本多「製缶業界ではアルミ缶メーカーの買収などが見られたが、私どもの包装容器事業ではアルミが飲料缶のメインである事業構造が継続した。ただ、アルミ缶を主に使用する飲料業界では、残念ながら人口減少の中で消費量が微減傾向にある。飲料の総量が増えづらい一方で、ジャンルの変化は感じる。例えば、アルコール飲料で需要の多かったビールは微減傾向だが、酎ハイなどのレディトゥドリンク(RTD)などが増加傾向にあり、最近の健康志向からノンアルコール飲料も増えてきた。その結果、製缶メーカーの生産は従来の大ロットから小ロット多品種に変わり、缶の印刷も多種多様になった。また、この10年間で環境対応への意識が非常に高まり、飲料メーカーから環境に配慮した技術や新製品の要望が私どもに寄せられ、CAN to CAN拡大への取り組みも進めた。軽量化とリサイクル材の活用推進については、引き続き製缶業界として力を入れていく。以前から缶の胴体には60―70%リサイクル材を使用してきたが、リサイクル材の安定調達ができれば100%も可能だ。缶蓋については開口性や耐圧強度などの性能をしっかり兼ね備える必要があるため、従来はリサイクル材を使うのが難しかった。しかし、現在はUACJとともに缶蓋の技術開発にも力を入れている」
――環境対応の話が出ましたが、リサイクルが近年大きな注目を集めるようになりました。大賀「20年ごろまでのリサイクル材は、低コスト材としての位置付けが強かった。新地金に添加材を加え、さらにリサイクル材を入れることで溶湯単価を安く抑えるという考え方が一般的だったためだ。とはいえ、スクラップ由来の工程では介在物が生じ、どうしてもドロスが多く出てしまう。低コストだからといって、すぐに皆がリサイクル材を使えるわけではなかった。一方で、SDGsや脱炭素の流れの中で再生材を使うこと自体に付加価値が生じ、資源循環を自社の将来性につなげたいと考える企業も出てきたところから、リサイクル業界が変わってきたと思う」
――政府は循環経済を国家戦略に掲げています。アルミなどの金属業界の重要性をどのように考えていますか。三牧「サーキュラーエコノミー(循環経済)のトップランナーとしてアルミ業界に頑張ってほしい、というのが国の考えだ。環境政策については経産省や環境省が進めており、どのような形であれば現実的な環境対応が可能かを経産省として模索している。GX(グリーントランスフォーメーション)では、環境対応と経済成長の両立を実行する。昨今、資源高とGXの概念が一致してきた中で、循環経済などの政策目標が明確になってきた。これまで日本は3R(リデュース・リユース・リサイクル)に積極的に取り組んできたが、国内の廃棄物を減らす3Rだけでは再生材の利用がなかなか進まない。今は海外からの資源制約やカーボンニュートラルへの対応が必要で、循環経済と企業の関心とをうまく経済成長につなげていくことが非常に大事だと考える。今までは最終商品の競争力が注目されてきたが、産業の垣根を超えた環境価値や素材の強さを日本経済の成長につなげていくのかを考えるのは、非常に重要なミッションだと思っている」
(藤田章嗣、増岡武秀)
【出席者】
▽田中信二氏(UACJ社長)
▽本多正憲氏(東洋製缶社長〈取材当時〉、現東洋製缶グループホールディングス副会長)
▽大賀丈久氏(山一金属専務)
▽三牧純一郎氏(経済産業省・GXグループ・資源循環経済課長)
司会=増田正則(産業新聞社編集局次長兼非鉄部長)
















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