――この10年間、中国地区では自然災害なども多く発生したが、業界で何か変化はあったか。まずは流通業界から。
中川「流通でいうと、2018年7月の西日本豪雨災害、その後のコロナによる活動自粛が大きな出来事だったと思う。豪雨災害では、鉄鋼関連企業が数多くある呉市が陸の孤島状態になり、支援物資さえも届けられない状況になった。自然災害の前では人間は無力だなというのを改めて実感した。コロナ禍では、各種行事を含め対外的な活動がかなり制限された。商売的にはあまり落ちたとは感じなかったが、人に会って話ができないという営業サイドの苦しさがかなりあった」
――それによる商流の変化などはあったか。
中川「鉄鋼業界は川上から川下までしっかりとした流れが構築されているので、そこは大きくは変わらなかったと思う。パンデミックという未知の経験に戸惑い、苦悩したのが皆共通の思いだったのではないか」
――厚板業界はどうか。
天谷「私は18年4月に広島に着任したが、それまでは仙台勤務で、いわゆる東日本大震災の災害復興需要に携わっていた。実は社長就任パーティーをしたのが西日本豪雨が発生した7月6日だったのだが、雨脚がどんどん強くなりパーティーは途中で中止となった。需要面では西日本豪雨災害、コロナによる仕事量の増減はあまり感じていない。鉄骨、橋梁、産業機械、各需要分野、メルクマール(指標)に沿っていった印象だ。造船は20年度が底だった」
――鉄骨ファブリケーターの業界はどうだったか。
山本「コロナ時においては、ファブは工場で作業し、広い現場で建造物を建てる仕事のため、現場への影響はなかった。技術の進化として、リモートによる会議や会話が一般的になったことが大きい。現場事務所などに行く回数が減り、結果として無駄な移動時間が削減された。東京や沖縄など遠方の仕事では、これまで数日間出張していたことがリモート会議で済むケースも多くなった」

山本泰徳・広島県鉄構工業会理事長(ステントス社長)
「下請け感覚から脱皮を 加工プラス付加価値重要」
――鉄鋼業界でもこの10年でデジタル化、DX、AI活用といった言葉を多く聞くようになった。
山本「鉄骨加工業界では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の浸透により革命が起きた。BIMにおける作業性の良さは、ファブサイドでは認識されている方はあまり多くない印象だが、躯体や鉄骨でのBIM活用は非常に価値が高い。ファブがBIMでモデリングした図面をフルに使い、その後の設備設計などで活用されていく。またファブの鉄骨建築業界での立場も中心的なものへと変わってきた。昔はゼネコンを回り”すみません、何か仕事をください”と回っている感じだったが(笑)」
天谷「BIMも当初は硬直的で融通が利かない感じだったが、かなり進化したと感じる」
山本「建設業界に限らず自動車業界などでも使用されており、この流れに乗っていけない業者は淘汰されていくとも思われる。また、鉄骨ファブに鋼材を販売する鋼材流通も随分変わった。昔は材料を仕入れて定尺のまま販売するというのが普通だったが、今は加工でプラスアルファの付加価値をつけなければならないという時代に変わりつつある」
中川「確かに、流通業界は間違いなくそうなった」
天谷「BIMのおかげで材料発注した後に設計変更などが起きるケースが減ればとても助かる」

中川淳一・広島県鉄鋼連合会理事長(取材当時=5月に理事長を交代、山陽鋼材社長)
「人手不足、協業で加工補完 ミルシート有料化が課題」
――鉄鋼業界では取引の適正化も大きなテーマとなった。変化した点や現状の課題はあるか。
山本「15―20年前の鉄骨業界はすぐに見積もりしろ、納期もすぐやれという世界だったが、今は適正な工期を考えてもらえるようになった。納期が短い工事は本当に減っている。案件が出て、われわれも1年、1年半前から準備に取り組めている状況だ」
天谷「われわれ業界も取引の適正化というのはやはり大きなテーマ。適正な納期というのもしかり、エキストラの加工については、通常の2倍の加工時間がかかるにもかかわらず、トンいくら、で価格を決められている。このあたりをもう少し、しっかりと対話していくことで、解決していく必要がある。また溶断業界はミルシートの電子化と、あとは物件名が明記された鋼材をもう少し共通化できるようにした方が良いかなと。ミルシートの電子化はもう少し進んでいくとは思われるが」
中川「ミルシートの有料化については、発行、管理をしている流通でも大きな課題になっている」
山本「人手不足が深刻化する中、いずれも人を介する仕事であるため、ミルシートの有料化は進めていくべきだと思う。サービスのままにしておいてほしいと思うファブも中にはいるかもしれないが、ファブとしてはその流れがあればさまざまな費用の価格転嫁も進めやすくなるのではないか」
天谷「今はこれだけ人件費も上がっている。有料が普通になれば、ミルシート発行業務についても効率化などが進んでいくはずだ。またここ数年で公正取引委員会の動きも変わってきた」
山本「ファブも20年以上前の下請け根性から脱皮していかなければならない。当組合ではこれを言い続けてきた結果、少しずつ組合員の感覚も変わってきているかなと感じている」

天谷武・全国厚板シヤリング工業組合中国支部長(太陽サカコー社長)
「エキストラ改善へ対話 ロボット化、適材適所で」
――そのほかデジタル化などの動きはどうか。
天谷「自分たちの会社も変化していかなければならないという中で、当社も一昨年くらい前から現場でタブレットを活用するようになり、紙の使用量は減ってきている。正直、最初は浸透に時間がかかるかと思っていたが、今は現場の担当者もタブレットがなければ仕事にならないと言っている。図面、計画、納期の見える化、共有化が進んだ。これもやはりコロナ禍以降の流れなのかもしれない」
山本「実にさまざまな意味でシステム化が進んだ。人手不足が続く製造業では多くの海外からの教育実習生が働いているが、当社では日本語で話したことがリアルタイムで通訳されるシステムを入れた。パソコンが翻訳し、スピーカーから瞬時に通訳した言葉が出る。大変便利で、組合でも紹介していこうと思っている」
天谷「話をお聞きしていると、この10年間は本当にいろんな変化があったと感じる。また話題に出た人手不足。ロボット化は進めざるを得ないとは思うが、なかなかロボットを使えるところは少ない。そのあたりは実際どうなのか」
山本「ファブでも一次加工ラインの自動化はよく言われているが、とはいえ、必ずそこには人も必要だ。データ入力、加工部材を置く作業もあり、ロボットが全てを担えるわけではない」
中川「自動化という意味では、ロボットを使うにしても量産と単品ものでは全然違ってくる。ロボットの性能も上がっているため、量産品については自動化が進みやすい環境なのではと思う」
天谷「例えば、厚板の開先は人間が行う作業のほうが速いが、開先ロボットも進化しており断面もとてもきれいに加工できる。手作業で行うには心身ともに大変な加工などをロボットに任せることで人を生かし、人の生産性を上げるような適材適所での活用を行っていけばいい」























