2020年8月18日

丸紅・金属本部の戦略を聞く 桑田成一本部長 鉄鉱石と銅貢献で黒字化 新事業、トレードと相乗効果

丸紅の金属本部は既存中核事業の強化、トレードの強化、新規事業創出を軸に収益基盤を拡充する方針だ。チリの銅鉱山、豪州鉄鉱石、豪州原料炭を強化する一方で、環境・循環型、新技術・新素材の新事業を創出し、トレードと相乗効果も狙うという桑田成一本部長に方針を聞いた。

――2019年度は4年ぶりの赤字だった。

「約600億円のチリの銅鉱山の減損を計上した。チリの2つ鉱山、センチネラとアントコヤの減損を行ったが、競争力の高い優良な権益と自負している。減損はしたが、鉱業権の大半が落ちた。600億円の減損を出したことで57億円の赤字だが、減損を除いて550億円近い実態純利益を出した」

――新戦力は。

「伊藤忠丸紅鉄鋼(MISI)、鉄鋼製品事業が一昨年まで別本部になっていた。それが加わった貢献が110億円程度。丸紅エコマテリアルズも昨年度他本部から加わった」

――ロイヒル鉄鉱山の拡張は。

「去年はほとんど貢献していない。下期で数カ月年産5500万トンペースを越えたが本格的には今年度からだ。昨年度は上半期が全般的に好調だった。ヴァーレのダムの事故の影響で鉄鉱石の市況が高かった。銅価も上半期の方が高かった。去年は石炭が稼ぎ頭、鉄鉱石、銅の順番だ」

――今年は黒字転換。

「昨年は減損なかりせば550億に対して今年は予算で260億だ。半減以下になる。世の中の環境がコロナの影響で悪いがポートフォリオがうまくかみ合っている。中核は去年の稼ぎ頭の石炭、ロイヒルの鉄鉱石、チリの銅鉱山、もう一つ大きいのはMISIだ。石炭は昨年に比べて市況が下落しているが、鉄鉱石は比較的堅調に推移している。銅は3月に4600ドルまで下げたが回復が堅調だ。MISIはオイルガス用のパイプの特に北米の業況が良くない。あと自動車鋼板が不調だ。石炭の減収とMISIの減収を鉄鉱石と銅でカバーするイメージだ」

――アルミはコアではない。

「アルミは収益規模では中核にはなっていない。ただポートフォリオとしてアルミは持ち続けていたい。収益力で石炭、鉄鉱石、銅にはかなわないが需要の伸びや今後の自動車の軽量化における役割など重要なマテリアルであり引き続き手掛けていく」

――今年の新戦力はロイヒル。

「ロイヒルは順調に生産出荷も続けている。将来鉱区の開発の検討を開始する。掘っていくと埋蔵量が減るのでその穴埋めの鉱区は開発が必要になる。これは主力の既存案件の競争力維持強化のための施策の一つだ。戦略として考えていることは中核事業の競争力の強化とトレードの強化、新規の3つだ。既存の中核事業の強化の施策の3本柱の一つがロイヒルの将来鉱区の開発だ。チリはセンチネラの鉱山の総合開発で拡張も視野に入れた計画の検討中だ。22年に意思決定したい」

――3本柱の3つ目は。

「収益の柱としては原料炭だ」

――拡張もあるのか。

「ない。将来的に必要な施策があればやっていくが特に大型の拡張は今のところない。コスト競争力の強化は従来からずっと図っている」

――自動化も課題。

「検討はしている。ただ炭鉱では効果が十分に得られるかまだ分からない」

――トレードの強化とは。

「収益力は資源の事業投資が大きくなっているのでMISI以外のトレードは稼げる実力を付ける必要がある。そこにも関連する新規に関しては大きく分けると2つの分野で考えている。一つは環境・循環型と称しているが、リサイクルなどこれから取り組んでいくのがバッテリーのリユース、バッテリーのマテリアルのリサイクル、電池材料としての新素材の追求だ。もう一つは新技術・新素材の分野で虹彩認証の取り組み。またリサイクルの観点もあるが、カナダのマグネシウム製錬のプロジェクト。こういった分野に取り組んでいくことで当然トレードも付随していく。トレードの実力も収益も上げていく考えだ」

――MISIとの協業も広がるのか。

「彼らは鉄鋼、我々は鉄鋼製品を除く金属だ。アルミの自動車用途でオーストリア・メタル(AMAG)と当社とMISIと提携した。MISIは自動車鋼板のノウハウやマーケットを知っている。ドイツを中心に活動しているAMAGも輸送機に強いメーカーで3社で組んでマーケットに入っていく。MISIは収益の柱の一つがパイプだが当社のエネルギー部隊との情報交換や鉱山の開発に伴う鉄道レール、インフラ部隊も鋼材を必要とするので情報共有は行っている。両株主ともできる限りの支援協力は行っている」

――コロナの前と後で変わったところは。

「大きく変わっていない。中長期的な構造的な変化はないのが実感だ。一方で鉱山の自動化に関しての価値観とか位置付けはコロナにより変わった。チリの銅鉱山は感染者が多いが鉱山の操業に直接携わる人だけではなくサービス業の人もいる。感染時のバックアップ、リモートでの操業の態勢の構築が今後課題としてコロナが終息しても残るだろう。我々も完全にロックダウンになった時の対策は完全にはし切れていないが、鉱山、製造現場で対策をそれぞれ講じていく」

――脱炭素や低炭素アルミなどの観点は。

「アルミは電力を大量に消費する。水力あるいは再生可能エネルギーへの電源シフトが重要だ。100%石炭ではなくオーストラリアのアルミ製錬の電源を徐々に再エネを織り交ぜるような対策も必要だ。また、水素は時間がかかるがやっていかなければいけない。鉄鋼業は還元剤に水素が入ってくる時代がくる。液体水素の輸送が可能になるのが早くて2030年半ばだ。各地に産地が確立されるのが2040年代、安定して供給されてエネルギー源あるいは還元剤として水素が流通されるのが早くて2050年代と見ている。意外とすぐくると考えるべきかもしれない。そのシフトは視野に入れ、一般炭を取り扱う部署で混焼でのアンモニアの使用などを顧客に提案している。将来的にはエネルギー源あるいは還元剤としての水素が商材として出てくる可能性はある」

――豪州のアルミも成り立つと。

「本当に排出が悪とされる場合は石炭火力ベースのオーストラリアは成り立たなくなると思うが世界中で本当に石炭火力をどこまで減らすか。オーストラリアだけ先にゼロとはならないと思う。日本も同様だが大きな課題だ。原子力という選択肢を捨てて石炭を捨てていく場合、経済的な観点での検討も必要だ」

――鉄鋼でも電炉が増えていくには電力が課題になる。

「電力の確保に加え、品質面を含め安定した鋼材の供給が可能か、スクラップ調達を含めて疑問はある。還元剤としての水素が成り立つとシナリオが大きく変わる可能性がある」(正清 俊夫)

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