中期計画進捗を聞く/神戸製鋼所 勝川四志彦社長/素材系強化、対策に注力/「成長追求」、機械系の需要増捕捉

中期計画進捗を聞く/神戸製鋼所 勝川四志彦社長/素材系強化、対策に注力/「成長追求」、機械系の需要増捕捉
――2025年度の連結経常利益は1213億円と減益ながら高い水準を維持した。今年度は1200億円を予想し、織り込んでいる中東情勢の業績影響を除くと1300億円と、高収益を持続する体制を築いているが、今年度最終の現中期経営計画の進捗について「まだ道半ば」と評価している。

「中期経営計画で掲げている『魅力ある企業への変革』は3年間では完結しないが、徐々に形になってきている。創業120周年記念のアニメ制作なども当社グループの社員に「自分たちが変わり、魅力ある企業へと変わっていこう」という機運を高める取り組みとして行っている。社員一人ひとりが参加しなければ変わっていかない。それを実現するための社内の取り組みを7つの変革として定義し、その総称をKOBELCO―X(コベルコ・エックス)と名付けた。グループ全体の様々な取り組みの掛け算を進めることで、魅力ある企業へと変革していく。そうした取り組みを通して環境が悪化する中でも一定水準の利益とROICを確保している」

――中計の重点課題「稼ぐ力の強化」で取り組む素材系、特に鉄鋼の収益改善に向けた追加策は。

「中東情勢を契機に需要がどう変化していくか注視されるが、将来的に鉄鋼の国内需要の減少が続くのは否めず、今後のさらなる需要減少に備え高炉の下限出銑の検討を進めていく。出銑量が数十万トン減少してもコストアップしないように工夫するなど対策を進め、一方で高付加価値品を増やしていく。高耐食めっき鋼板のKOBEMAGは自社での一貫生産に取り組む。KOBEMAGはお客様からの期待が高い。また、自動車分野の需要は厳しい状況が続く見通しであり、新たな柱として建材分野を強化していく。中東情勢は気がかりであり、当面の間の資材は確保しており、操業に影響はないが、全体的にコストが上がっているので製品価格に転嫁していく」

――製造拠点を展開する米国・中国・タイでの成長戦略は。

「海外各地での地産地消化に対する最適な拠点配置を常に検討している。米国は自動車用鋼板を製造するプロテックを運営し、業績に貢献しているが、当社が得意とする特殊鋼の展開は十分ではない。タイでは逆に特殊鋼線材ミルを持ち、鋼板類の拠点は置いていない。中国の自動車用鋼板とアルミ板の両製造拠点は中国資本向けの拡販がポイント。北米や中国の市場は規模が大きく、非常に重要であり、エリアごとに検討を進めている。現段階で決め打つ必要はなく、広い視点で考えていく。インドは機械系が進出しているが、素材系は未進出だ。優先順位をつけ、マーケットの成長をみながら投資を判断していく」

――アルミ板事業の収益改善策について。

「国内市場は縮小傾向にあり、従来の事業構造のままでは対応が難しい。缶材など既存分野を維持しつつ、ディスク材や半導体製造装置向け厚板など足元順調な分野への展開を進める。市場環境の変化に合わせて製品構成を見直すとともに、生産量に見合った人員・設備体制の適正化を図る。価格改定やコスト削減、エネルギー対策も含め、総合的な収益改善を進めていく」

――アルミ押出事業の立て直しをどのように進めるのか。

「課題は足元の損益ではなく、将来的な収益力と競争力の確保にある。自動車向け比率の高さも踏まえ、用途構成の見直しや研究開発テーマの対応を進める必要がある。単独での構造改革に加え、他社との協業も選択肢の一つとして検討している。方向性を決めているわけではないが、将来の収益性向上につながる幅広い可能性を視野に入れながら検討を進めている」

――中計のもう1つの柱「成長追求」は、機械系が25年度に過去最高利益と成果を上げた。さらなる事業拡大の方策は。

「順調に推移している。化学・石油化学の分野に加え、水素やアンモニア関連などカーボンニュートラル(CN)に向けたCO2排出削減の実証レベルのプロジェクトが多く進められ、受注が拡大した。数年後に商業プラントが増えていくとみていたが、CNの勢いが後退し、案件の具体化は少し先になる。ただ、航空・宇宙分野や半導体分野の需要は増え、チャンスが広がっている。当社の製品はオーダーメイドであり、当社ならではのメニューで需要を捉えていく。航空・宇宙・防衛はアルミ鋳鍛やチタンの需要も増えていく。非常に付加価値が高く、参入者は少ないので楽しみな分野だ」

「建設機械は次世代モデルがお客様の将来のニーズに応えられるかどうかで結果が変わってくる。自動車のようにマニュアル、オートマがあり、オートマは経験が浅いオペレーターでも高いレベルで操作ができる。遠隔操作の『K―DIVE』を展開しているが、いずれ自動運転と組み合わせて使えるようになる可能性があり、オペレーター不足の解消に寄与する。造船についても政府が建造量倍増の方針を掲げている。厚板など素材だけでなく、LNG運搬船・燃料船用の圧縮機や熱交換器など船舶1隻に使用される当社のアイテムはかなりあり、需要が増えていくと期待している」

――CNに向けて高炉の電気炉への切り替えは対策の一案だが、先行する形でスクラップ溶解炉の導入を検討している。

「高炉の改修時期は当初予定の2030年代半ばから、稼働率の低下によって後ろ倒しになり、2040年頃と見ている。電炉に切り替えるかどうか判断するのにまだ時間はある。ただし、高炉でのCO2削減の対策を進める必要があり、スクラップをより有効活用するためにスクラップ溶解炉の導入を検討する。本設備で製造した溶鋼を転炉内で高炉溶銑と混合するにあたり成分の調整など技術開発が必要であり、コストも上がるが、製造する鋼材は高炉材と同等の品質であり、有効に活用したいと考えている。電気炉に切り替えたとしてもCNの実現にはCCSやグリーン電力が必要になる。水素還元製鉄の実現が早まるかもしれず、いろいろな技術の研究が進む中で短期のうちに特定はせず、複線的アプローチを続ける。オマーンでの還元鉄製造のプロジェクトも少し時間をかけて検討を続ける」

――航空宇宙分野のアルミ鋳鍛とチタン事業での設備投資の考え方は。

「世界情勢の変化により航空・宇宙・防衛分野でサプライチェーンを見直す動きが出ている。需要の拡大が見込まれ、既存製品の供給能力増強に向けた設備投資が必要になる可能性がある。将来の新たなニーズへの対応も見据え、必要な投資を検討していく考えだ」

――DXで生成AIの活用に積極的に取り組んでいる。

「25年度は本格的に検証しようと社員約3600人にマイクロソフト365コパイロットの大規模実証を行い、どのように使え、どのような効果が上がるか、有効性を全社横断で確認した。アンケート形式でデータを集めたところ、業務時間の短縮と削減した時間を価値創造業務に転換するなど一定の成果を得られた。26年度は全社に展開する。ただ、今のAI活用による業務効率化は個人の発想に基づいており、これから期待するのは、組織としてのアウトプットの向上である。どう具現化していくか、全員参加で考えていく」

――27年度からの次期中期計画の方向性は。利益のポートフォリオは機械系で5割だが、次期中計は6割、素材2割、電力2割と変化していくのでは。

「『稼ぐ力の強化』について、素材系は国内の縮小していくマーケットの中でどう展開できるかを考えていくが、商品それぞれの状況においてメリハリをつけていく。『成長追求』について機械系は市場が成長し、案件が非常に多い。自社で手掛けると数年かかるが、機能と時間の課題を解決するM&Aもにらみながら、もう一段の上の事業規模を目指す。機械系を成長ドライバーとし、利益の安定性を高め、PBRの向上を目指す。収益力を高めながら投資額を現中計より増やしていく。26年度は業績をもう少し改善し、将来に向けた投資を考えていく」(植木美知也、増岡秀武)



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