「主に鋼材市況の悪化を背景に、収益(売上高)が1522億円減の2兆372億円となったが、コスト管理の取り組みに円安影響が加わり、売上総利益を1382億円と54億円減にとどめ、売上総利益率を6・3%から6・5%に引き上げた。インフレの影響などで販管費が25億円増加し、営業利益は75億円減の383億円となったが、中国の一部事業の売却や金融収支の改善などで前期並みの純利益を維持することができた」
――鋼材単価が下がり、取扱量も減った。
「中国の鋼材輸出増加による国際鉄鋼マーケットの混乱が続き、国内では人手不足や物流問題などで建設分野向けの需要が低調だった。鋼材平均単価はトン15万6000円で前期比9000円下がり、取扱量は1553万トンで24万トン減少した」
――国内外のバランスは。
「収益の内訳は国内8633億円、海外1兆1739億円。前期はそれぞれ9419億円、1兆2475億円で、トータル2兆1894億円だった」
――2030年のあり姿を「課題解決力ナンバーワン」と描いている。
「市場構造が大きく転換する局面を迎えており、お客様や仕入メーカーさん、マーケットとしっかり向き合って、まずはお客様やマーケットの課題をしっかり受け止めて、ともに解決策を探っていく必要がある。社内については組織の機能を見直し、業務を効率化し、一方で投融資を増やしていく。深化・進化・新化の三つの意味を込めた『シンカ』をコンセプトとする『シン・経営計画2027』(2025-27年度)では、既存の強みをさらに磨いて、高機能・高付加価値を創出しながら、新たな領域に挑戦していく方針を打ち出した」
――中期計画1年目の手応えは。
「業界や社会課題の解決につなげる中長期の視点での人材育成、投融資はほぼ計画通り実行したが、経営環境の変化がとても速く、今期はペースを上げたいと考えている」
――投融資の実績を。
「舶用新燃料タンク向け大型鏡板の製造・販売会社、久保メタルを発足した。造船は政府の戦略17分野のひとつに位置付けられているが、環境規制強化によってLNGやアンモニアなどへの船舶燃料の転換が求められている。このため大型蓄圧式燃料タンクの需要増が見込まれ、大型鏡板の安定供給体制の整備が急務となっている。そこで大型製缶加工など鋼構造物を得意とする長崎県の久保工業と久保メタルを発足し、広島県呉市にある既設の工場建屋を活用し、大型鏡板の曲げ加工、溶接、総組み、出荷の一貫生産体制を構築した。産業界の課題解決に直結する新規事業であり、舶用向け大型鏡板の国内シェア50%を目指す」
――国内の鉄鋼市場構造変化への対応策を。
「国内外の地域統括制度を見直して、『国内統括』を新設した。いま一度、国内市場を俯瞰し、構造変化の行方をしっかり見定めながら課題を掘り下げていく。全国各地に展開するグループ企業の機能を把握した上で、加工・流通のあり方を見極めるとともに、広い視点で需要や市場を開拓していく」
――グループ企業の機能見直しも続けている。
「線材特殊鋼分野では、メタルワン特殊鋼とメタルワン鉄鋼製品販売を統合し、メタルワンネクサスを設立。薄板流通ビジネスの効率化に向けて、グループ企業の浜松鋼板加工の全株式を五十鈴東海に譲渡した」
――需要創出、市場開拓の視点では。
「東北6県の建設会社7社とみずほ銀行が広域連携・共同出資して25年6月に設立された東北アライアンス建設(TAC)と戦略的パートナーシップ協定を締結した。TACは人口減少に伴う市場縮小、技術者不足が深刻化するなか、東北における建設業の持続的成長を目指しており、メタルワンは建設業におけるサプライチェーンの強化・高度化の観点から連携を図り、建設分野の活性化、インフラ整備や強靭化に貢献していく」
――海外市場開拓に向けて、海外の地域統括体制も見直した。
「『東アジア統括』と『アセアン・大洋州統括』を統合し、『東アジア・アセアン・大洋州統括』とした。『南西アジア統括』の管掌地域に中東・アフリカを追加し、『南西アジア・中東・アフリカ統括』に組み替えた。例えばベトナムに在住する日本人が1万人で韓国人は30万人。韓国は半導体に加えて、造船業や建機など重工業で高い国際競争力を持ち、アセアンからさらにインドへと積極的に進出している。東アジアと位置付ける韓国、台湾、中国とアセアン諸国、豪州のビジネスを一体的に管理・運営することで新たなサプライチェーンを創出していく」
――タイのステンレスコイルセンターを100%子会社化した。
「パシフィックシート&コイルの株式51%を追加取得した。スリッター4基、レベラー4基、シャーリング3基、コイル研磨機を揃え、幅広いサイズのステンレス鋼板の一貫加工体制を構築している。クリーンルームでのスリット・レベラー加工、高い評価を得ている表面研磨加工や保税工場を活用した近隣諸国への輸出、データセンター向けなどへの高付加価値商品で販売を増やしていく」
――米国市場開拓、成長戦略投資の体制を整えていく。「持株会社のメタルワン・ホールディングス・アメリカがあり、トレーディングを行うメタルワン・アメリカ、メタルワン・メキシコがそれぞれ主要マーケットにオフィスを構えている。薄板コイルセンターのコイルプラス、自動車用ファスナーの在庫販売を行うナイファストが米国、カナダ、メキシコでそれぞれ事業を展開。鋼管分野ではカナダで流通・在庫機能を担うカンタックがある。ピッツバーグ、デトロイトに事務所を4月に開設し、市場開拓を加速している」
――株主の三菱商事が米国のシェールガス権益を持つエーソン(以下Adamas Energyと表記)の買収を完了した。
「1兆2000億円規模の大型投資。Adamas Energyはテキサス州とルイジアナ州を跨ぐヘインズビルシェール層で天然ガスを量産している。三菱商事との間で相互シナジーを作っていきたいと考えている。三菱商事は米国のデータセンター事業にも本格参入しており、建設鋼材や資機材のサプライチェーン構築のチャンスを探っている」
――インドも事業基盤がある。
「現地法人に加えて、厚板溶断加工のIMOP、コイルセンターのマヒンドラ・スチールサービスセンターとマネサール・スチール・プロセシング、そしてナイファスト・インディアがそれぞれ事業を展開しており、国内自動車市場で4割のシェアを握るマルチ・スズキ向けのサプライチェーンを拡充していく必要がある。日本製鉄、JFEスチールが現地事業を拡大しており、国内・輸出市場開拓のチャンスを探っていく」
――「南西アジア・中東・アフリカ統括」の狙いを。
「ドバイをハブ機能として、インドから中東、さらにアフリカ市場へのアプローチを一体となって推し進めていく。アフリカでは、三菱商事のナイロビのオフィス内に駐在員を派遣している。中東、アフリカともに三菱商事、双日の両株主会社の様々なトレードやプロジェクトなどのビジネスや、彼らの事業基盤を活用しながら新規ビジネスの機会を窺っていく」
――欧州・CISは本社直轄のまま。
「イタリアの変圧器・コアメーカーのラゴアへの投資は、電力、エネルギー分野で先行して手応えを感じている。日本製鉄グループがスウェーデン、スロバキアへと現地事業を拡大している。ハンガリーのナイファストで蓄積した知見も活用しながら、サプライチェーンを拡充し、欧州域内でのインサイダー型ビジネスを広げていきたい」
――資源循環型社会への転換を迫られており、冷鉄源の安定供給が課題となっている。
「エムエム建材がNTTドコモビジネスと共同で鉄鋼業や建設業などの資源循環プロセスを効率化するプラットフォーム『STELLAR HUB』の提供を開始した。具体的には建築物の解体工事プロセスで発生する金属スクラップの再資源化フローを可視化するプラットフォーム。NTTドコモが提供する再生資源循環プラットフォームを活用し、エムエム建材が取り扱う冷鉄源の再資源化の流れを把握し、透明化、効率化を図っていく」
――人材育成に注力している。
「社員数は設立当初の700人から1000人規模に拡大し、メタルワン入社の社員が8割を超えている。26年度は新卒・キャリアで50人規模の採用を継続する。連結1万人規模で、海外の現地法人を含めたグループ会社が100社ある。単体・グループ社員の育成が持続的成長に直結する。中長期ビジョンの実現向けて、従来の延長線上ではない、よりダイナミックに事業を創出していく企業風土を醸成していきたい。研修制度を拡充し、海外赴任の機会も増やしている。経営層の育成については、ネットワークやスキルを高めるため事業構想大学院大学に依頼した『事業構想人財開発プログラム』をスタート。選抜された社員が社会課題や鉄鋼業界の課題の解決につながる構想力を磨いている」
――定量目標について。
「純利益は21年度以降、281億円、415億円、350億円、288億円、285億円と推移してきた。経営環境は厳しくなっているが、営業利益は400億円規模を維持している。投融資を通じた事業利益や配当を積み上げていくことで、もう一段上のステージが見えてくる。国内の収益基盤を強靭化しつつ、ある程度のリスクを取りながら海外の成長戦略投資を加速する」(谷藤 真澄)

























