「非鉄金属は経済成長に欠かせず、獲得競争が激化しているのは間違いない。特に最近顕著なのがデータセンターや電気自動車などでの需要が伸びると見込まれる銅だ。資源国による囲い込みで言うと、近年ではインドネシアが銅とニッケルの国内加工義務化を進め、特にニッケルは鉱石のままでの輸出を禁止した」
――資源開発の環境も厳しくなる。
「ESGに対する意識が高まる中で、資源開発に際して環境許認可の取得が昔と比べて若干長期化する傾向が見られる。鉱山の投資・運営では、銅で言えば開発が比較的行いやすい鉱山はほぼ開発されており、新しいプロジェクトは港から距離がある内陸や標高が高いところにシフト。このため開発や操業のコストは高まる傾向にある。当社が出資するチリのケブラダ・ブランカ鉱山(QB、2023年稼働)もそうだし、豪州でリオティントと開発を進めるウィヌ銅・金プロジェクトも比較的内陸の案件だ」
――資源国の輸出規制はやむを得ないと考えるか。
「資源は各国の財産で、国としてそれをいかに国益につなげていくかを考えて対応することは致し方ない」
――コブレ・パナマ鉱山のように、環境問題を理由に操業停止を迫られるケースも見られるようになった。
「鉱山操業では様々な廃棄物が出る。その管理や、処理に必要な水の確保、排出する水処理など、これらに対する意識は高まっていると思う」
――従来以上に環境コストをかけ地元同意を得る必要がある。
「そうせざるを得ない」
――資源事業を持続的に成長させていくために企業として何が必要か。
「当社は長期ビジョンで『世界の非鉄リーダー』を目指しており、銅は権益30万トンを目標に掲げる。その達成に向けて鉱山開発を粛々と進めるのが我々の基本的な考え方。金も優良鉱山を開発していく。QBがフル生産になり、ウィヌが操業開始すれば、目標の銅30万トン権益が視野に入ってくる。金は24年に生産を開始したカナダのコテ金鉱山が順調に立ち上がり、ウィヌも金が含まれる。こうした資源の開発案件に引き続き取り組む」
「一方で、特に銅鉱山開発は大規模になるため、当社がマジョリティーを持って海外で進めるのは非常に難しい。銅の開発は海外の優良な資源パートナーと連携し、お互いの信頼関係の下に進めているのが実態になる」
――マジョリティーを持つ難しさは。「小規模な鉱山であれば可能かもしれないが、なかなか採算性が取りにくいため、中規模や大規模の開発をターゲットにする。大規模になると、許認可や地元・原住民への対応を我々で全て対応するのが、マンパワー的にも経験的にもなかなか難しい」
――従来使えなかった鉱石や尾鉱からの回収技術が出てきている。
「資源は限られており、従来は廃棄物として積み上げられていたものから有価金属を回収する技術の開発は確実に進むと思う。ただこれは費用対効果の問題もあり、コストとメリットを精査する必要がある」
――銅だと南米、豪州、北米が主産国だが、政府はアフリカなど新たなエリアでの日本企業の開発を促そうとしている。
「当社は環太平洋の領域で開発している。アフリカでの開発の可能性だが、我々はまず知見がないし、カントリーリスクも高いとの認識がある。例えば開発して数年で現地の行政が変わり、新たな法律ができたりするようなことがあれば、我々は起業計画が狂ってしまう。その辺りがクリアにならないと開発案件の対象にはなりにくい。ただ、海外の信頼できる資源パートナーが優良な案件を持ってきて、我々と合弁でやろうというような話があれば検討の余地はあるかと思っている」
――政府は海底資源開発も推進している。
「海底資源開発は天然資源が乏しい日本にとって重要で、やるべきだとは考えている。当社はこれまで、JOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)のマンガンノジュールやコバルトリッチクラストの製錬プロセス開発に参画している。レアアース泥でも依頼などがあれば検討することになるかと思う」
――海底資源の採掘ではなく製錬で協力できる部分があると。
「海底での採掘は土建、機械、石油技術の合わせ技だと思っており、我々の鉱山技術では太刀打ちできない。地上に持ってきたものを処理するのが我々の立場になる」
――海底資源に経済性が見えれば事業として入ることも。
「可能性はある。レアアース泥であれば、基本的には酸などで浸出して溶媒抽出で分離精製するのがベースになると思う。これは当社としてすでに事業化しているプロセスで、技術的には対応できると考えている」
――製錬所の役割をどう考えるか。
「新たな資源開発とリサイクルを両輪にしていかないと、資源の確保は難しいと考えている。特に日本は天然資源が乏しいため、リサイクルが重要なポジションになる。多くの製錬メーカーが『ハイブリッド製錬』という形でリサイクルを強化しているが、一方でリサイクル原料になり得るものが結構海外に流出しているのも事実。これは国のサポートが必要だが、海外に流出しているリサイクル原料をいかに国内にとどめるかが重要になる。海外に流出しているリサイクル原料の多くは処理が難しいもので、我々製錬企業はいかに前処理などを施して国内で効率的にリサイクルできるようにするかがポイントになる。銅製錬所でのリサイクル原料処理は、製錬工程で発生する反応熱の余剰熱を活用して行うのがベースになっている。ただ、余剰熱で溶かせる限界量を超える二次原料の処理には新たな熱源が必要。燃料をどんどん使えば当然溶かせるが、それではGHG削減に相反するため本末転倒だ。熱源に関する技術革新も必要になる」
――国内に銅、ニッケル、亜鉛、鉛など多くの製錬所があることは重要か。
「これだけ色々な製錬所が近接した領域に存在するのは日本の強みだと思う。当社は銅、ニッケルを中心に製造しているが、原料中にはそれ以外にも様々な有価金属が入っている。そういったものは銅を造る過程で中間物として取り出されるが、当社内で処理できなければほかの製錬メーカーに委託する。こうして国内で循環できる非鉄製錬所のネットワークは日本にとって重要。維持しないといけないし、国としてもサポートすべきだと考える」
――日本が非鉄金属資源を安定確保していくために何が必要か。「海外で資源を確保していくうえで、JOGMECのような探鉱などの多様な技術を持つ組織は重要だ。資金面では国際協力銀行などによる支援が必要。国としてそうした組織をきちんとサポートしてほしい。また、税制面では海外投資等損失準備金が新しい資源案件を海外で進めるうえでメリットがある。こういった制度も維持してもらいたい。リサイクルに関しては、過度な海外流出を抑えるための法規制や標準化の整備も必要だろう。リサイクル原料を使用した製品を需要家が使うメリットも重要になると考える。リサイクル材が使われるようになる仕組みづくりも推進してもらいたい」
――買鉱条件悪化で製錬事業の収益環境は厳しい。
「TC/RC(製錬マージン)が低迷している。当社は自山鉱の権益が約23万トンあり、東予工場(愛媛県)で処理する精鉱の5―6割は自山鉱で賄えている。その分については製錬側で足かせになっても、鉱山側ではメリットになるため会社全体としてオフセットされる。残りの4割は単純買鉱で、その部分は買鉱条件悪化が収益に直接影響する。TC/RCは従来のベンチマーク方式ではなく、現在は企業同士の相対交渉で決まる。その条件をいかに高めるか、企業努力が求められる」
――より良い買鉱条件を得るためには何が必要か。
「鉱山会社は売り先として、競争力があり収益性の高い会社を選びたいと思う。精鉱の売買契約をするときに実収条件というものがあるが、収益性が高い製錬メーカーであればより高い実収条件で契約ができ、その分だけ鉱石を高く売れるので鉱山会社としてメリットになる。また多くの鉱山会社は常に安定して長期契約で買う製錬メーカーに売りたい。だから我々は長期契約でフル生産を前提とし、実収率を高める努力をしている。そのうえでより良いTC/RCを得るための交渉に力を注ぎ、それでも悪化する分は電気銅の販売プレミアムに、こちらも需要家と交渉して転嫁していく」
――リサイクル製錬シフトが進むが、一次資源は必要か。
「まずリサイクル資源は限られており、全ての製錬がリサイクルに特化することはできない。当社の場合は銅の製錬事業が住友グループの源流事業の一つで、海外資源の開発も手掛けながら現在まで続けてきている。多くの海外資源メジャーとの友好関係も築いてきており、これを今後も生かしていきたい」
――精鉱の購入だけでなく権益を取ることの重要性は。
「色々あるが、菱刈鉱山(鹿児島県、国内で唯一商業生産している金鉱山)で育成した技術者を海外でも活躍させたいというのも一つ。だから単に権益を持つだけでなく、必ず運営にも参画する。海外鉱山での活躍を通じて、日本の鉱山技術をさらに高め、将来につないでいくことが大切だと考えている」
(田島義史)





















