「建設は人手不足・資材高を背景に建築物件が先送りになり、製造業も海外需要の不振などから低調に推移し、鋼材輸出についても海外の市況がなかなか上がらず、販売環境は厳しいままであった。結果的に想定の範囲内には収まったものの、米国の関税引き上げ影響なども鉄鋼の生産量に影響し、単独粗鋼は2137万トンと低い水準にとどまった。為替の影響もあるが、年後半に原料コストが大きく上昇し、スプレッドの確保が難しい状況が続いた」
――JFEエンジニアリングはセグメント利益が239億円と24%増え、受注高も大幅に増加した。JFE商事は減益ながら402億円と高収益を持続し、いずれも健闘している。
「JFEエンジは受注高が8361億円と過去最高を大きく更新した。WastetoResource分野、カーボンニュートラル分野の大型案件の出件タイミングが25年度に集中したことが要因だ。26年度の受注高の想定は6000億円と抑えているが、確実に利益を上げるために堅実に進めている」
「JFE商事は特に海外でM&Aを行い、利益を伸ばしてきた。25年度は米国市場が振るわなかったが、安定して400億円を確保できる土台を築いている。米国のホットコイル市況は少し戻ってきており、今後需要が回復に向かえばセムコやケリーパイプなどにも好影響が及ぶ。また国内鋼材の単価上昇を見込み、26年度は450億円を計画している」
――26年度の鉄鋼需要は前年と変わらず厳しい状況が続いている。
「国内需要は前年とさほど変わらない見通しであり、自動車の国内生産台数は前年並みを想定している。造船は手持ち工事量が多く、鋼材需要としては安定している。建築・土木は人手不足や資材高が続き大幅な回復は期待できない。先送りになっている再開発案件なども多い。土木は予算は高いものの、人手不足などから工事量や鋼材の需要量に結びついてこない」
「海外は、中国の粗鋼生産に減少傾向がみられるが、鋼材輸出が3月も900万トンを超え、高水準を維持している。中国国内の鋼材市況は上がってきているが、力強く上昇するには需給の一段の調整が必要とみられる。ASEANはタイとインドネシアの需要が底を打ったものの、大きく増える状況にない。インドは高い経済成長率が続き、需要が旺盛であり、政府のセーフガードによって鋼材市況が上向き、市場は引き続き堅調に推移する見通し。米国は年明け、鋼材市況は上がってきているが、需給をもう少し見極めたいと思っている」
――国内外の需要は厳しく、2026年度の単独粗鋼生産量の予想は2150万トンと前年のほぼ横ばい。その中で利益を上げていく必要があり、鋼材値上げが大きなポイントになる。「原料コストなど諸物価が上がっており、販売価格に反映していく。トン1万円の値上げを早期に打ち出し、是が非でも成し遂げなければならない強い意志で取り組んでいる。電炉メーカーも値上げに乗り出しており、値上げのムードは醸成されている。お客様と会話を重ね、理解を得つつあり、早期に1万円の値上げを達成したいと考えている。値上げのタイミングは品種やお客様によって異なるが、すでに値上げに合意いただいた事例も出てきている。加えて至近の諸物価高騰を受けた中東情勢による影響で上がったコストについても転嫁していく必要がある」
――中東情勢に関して一定のコスト影響を示した。需要や製鉄所の操業への影響は。
「原油価格(WTI)1バレル100ドル程度が長期に続いた場合、月100億円程度のコスト影響を想定した。実際にいつから、どの程度続くのかというのは判断できず、状況を注視する。需要面に関しては、中東情勢によって数量が減少するというお客様の生産影響は(5月中旬の時点で)明確には表れていない。当社の製造現場で塗料などラインの操業に影響する資材は当然あるが、足元は在庫や調達状況に大きな問題はない。中東情勢がさらに長期化した際には下期に向けて不透明な点はあり、早期の沈静化を望んでいる」
――高付加価値品の拡大も収益改善のポイントの一つ。電磁鋼板の能力増強が進み、大単重厚板の販売が洋上風力発電向けに本格化していく。
「電磁鋼板の能力増強はステップ1が24年に稼働し、お客様の承認取得を進めている段階であり、拡販に取り組んでいる。ステップ2は計画通り今年度末までに完工する予定であり、目指す供給体制を整備する。EV(電気自動車)向けは足元、北米中心に需要が想定を下回っているが、中長期的に需要が伸びる予測は変わっていない。需要動向に合わせて操業、販売を進め、最新鋭のハイグレード製品の拡販に努めていく。大単重厚板に関しては、JFEエンジニアリングが受注した秋田潟上向けの出荷が始まった。グループとして着実に実行していくことが将来の案件の受注につながるので、品質を保ち、納期を守っていく。次の案件についても26年度中に受注したいと考えている。国内でしっかりとサプライチェーンを組んでいく。大単重厚板はグローバルに販売しており昨年も実績のある欧州など海外向けも拡販を進めていく」
――形鋼事業の再編を決めた。検討を進めている大和工業との協業に向けてグループ体制を先行して整えるということか。京浜地区の薄板事業の再編も実施するが、ヨドコウと建材薄板で協業を検討している。
「いずれも重要なプロジェクトであり、まずは当社の中で再編を進め、次の段階として大和工業やヨドコウとの協業を考えていく。世の中の状況変化が速く、常にいろいろなことを考えている。後手を踏まないように先手で対応していく」
――海外事業会社は利益増を予想している。大半がインド事業の増益分となるようだが、新会社JJSLではどの程度の利益を見込んでいるか。「JJSLは3月に25%出資し、6月に最終的に50%の出資が完了する。会計上は実質的に4月の連結から50%ということで利益の取り込みができる見通しであり、年度通して持分法利益を取り込めるとなれば、年間100億円程度が期待できる。操業に関してJSWスチールの水準は非常に高いが、当社の技術やノウハウを注ぎ込むことでさらにJJSLの収益性が高まり、トン当たり利益を上げていくことを期待している。JJSLの粗鋼生産能力は年450万トン。30年に向けて1000万トンに拡張し、将来的に1500万トンを目指している。当社からまず経理など管理系人材を派遣し、受入体制を整えた後順次、派遣者を増やしていく。今年度は1000万トンプランを描くのが大きなミッションであり、当社とJSWと共同で計画を策定していく」
――インドは高い経済成長が続き、鉄鋼需要の拡大が続く。出資するJSWの成長も期待できる。
「JSWは年産粗鋼3600万トンの体制となり、オーガニックグロースが期待できる。前年は市況が下落した影響を受けたが、12月の政府のセーフガード発動によって収益は上がり、今年度は取り込み利益の改善を見込んでいる。買収した電磁鋼板製造のJ2ESナーシクは昨年、製品市況があまりよくなく、業績は低調だったが、今年度は市況回復が期待でき、収益が改善する見通しだ」
――米国は足元鋼材市況が上がり、需要の回復も見込める状況に。米国での重要テーマであるニューコアとの新たな協業に進展は
「米国のCSIは、昨年はスラブの調達コストが上がり厳しい年だったが、今年は鋼板市況が上がり、需要の回復と輸入材の減少がプラスに効き、業績は改善するとみている。メキシコのNJSMは製品の承認作業が進み、徐々に生産量が増えている。米国でのインサイダー化事業は重要度を増しており、ニューコアとは引き続き、伸びる高級鋼需要を捉えるための新たなプロジェクトを検討していく」
――ASEAN、中国の市場は依然低調。中国の事業会社は徐々に改善に向かっているようだが。
「ASEANはタイのJSGT、インドネシアのJSGIとも需要環境に大きな変化はなく、収益は前年並みで推移している。中国は自動車用鋼板製造のGJSSにおいて25年黒字を確保しているものの、NEV車比率が引き続き伸長する状況に加え、デフレ経済の中で26年に入り自動車販売動向に力強さを欠く状況にある。販売数量面では課題も抱えており、日系自動車だけでなく、地場系への販路拡大に取り組んでいきたい。特殊鋼棒鋼製造のBJSSも合弁相手の宝武と共同で改善に注力し、成果が上がっている。プロミクスとコスト改善が大きく寄与し、受注量も増えて収益貢献が高まっている」(植木 美知也)















