「北米の鋼管市場は高関税によって輸入品が抑制されると予想したが、韓国と欧州からのシェールガス用の溶接鋼管が昨年後半まで減らず、市況が下落した。トランプ政権に代わり、見込んでいた化石燃料の開発は上向かず、好調時に650―700基だった石油掘削リグの稼働数は500基台前半にとどまった。中東情勢の悪化で鋼管を中東まで輸送できず、中継地点での当社のヤードに一時退避しているが、イラン周辺国の石油・ガス関連施設がダメージを受け、鋼管を受け取れない国も一部残っており、足元の出荷が見通しづらい状況が続いている」
――鋼管事業は減益だったが、鋼材事業は洋上風力発電用のモノパイルを製造する欧州のEEWの利益貢献などで増益に。
「EEWは当初の事業計画より上振れた。国内外の事業会社が無駄を徹底的に排除し、筋肉質の経営、営業管理にまい進し、利益を地道に積み上げてくれた。また、市場が低迷している中国のコイルセンター事業の見直しを進め、中国企業に一部資本を譲渡し、中国企業との協業を進めている。資産の入れ替えは25年度にほぼ終え、26年度は一段上のステージに向かう。歩留まりを改善し、不要の在庫は適時処分し、バランスシートを健全に保つ。与信管理をより注意しなければならず、危険予知が重要になる」
――鋼管で堅調だった非米への中東影響はどの程度に。
「非米は長期契約の積み重ねであり、比較的安定している。非米を伸ばしているが、中東の比率が圧倒的に高いわけでもなく、中東情勢の影響は今のところ限定的だ。ホルムズ海峡の閉鎖は現在も続いているが、担当地域の社員も現地で奮闘し、納入が一部再開している。鋼管も鋼材も持前のサプライチェーン(SC)は強みであり、有事にこそ、その真価が発揮できた。中東情勢はグローバルに展開したSCの力をさらに磨く機会となっている」
――鋼材事業は海外での新たな投資が大きなテーマ。北米の強化策は。「データセンターなど電力需要が増え、方向性電磁鋼板の需要も増えるため、北米のコイルセンター(CC)事業を強化・拡大を図る。米国に現在5拠点、ミシガンからアラバマまでの南北にネットワークを持つが、更にエリアの拡大も図りたい。米国は広く、品質だけでなくコストとデリバリーが大事であり、需要立地を考える。出来れば需要家の門前に工場を置きたい。米国の社会が歓迎してくれる機能を考え、マーケットインのために一緒に取り組むパートナーも探している。USスチールの鋼材を広く扱うには販売ネットワークが必要。米国市場全体を広く詳細に把握するためにピッツバーグ支店にSBU長(本部長)クラスの人材を派遣した。人脈を強くするネットワーキングを担うとともに市場を回りながら企画・構想を練り、米国からみた欧州事業などグローバル戦略を現場の温度感、空気感の中で当社の他のグループとの合わせ技含め考えてもらっている」
――もう一つの重要市場のインドでムカンド・スミ・スペシャルスチールの能力を増強する。
「ムカンドの能力増強は環境アセスメント完了次第、設備を発注し、早期に立ち上げ、29年度以降の収益拡大を見込んでいる。足元の旺盛な需要に対応する為、外部からの鉄源の調達や販路の拡大に加え、原料コスト上昇に対する製品値上げを進める必要があり、現地パートナーと連携して取り組む。品質の価値を認めていただくために日系需要家に向けて日本からも側面支援する。需要は増えていくので、価値の対価を適正に得られれば事業として大きく成長できる」
――課題は国内と、事業を長く広く展開しているASEAN。対応策のポイントは。
「国内は需要の減少に伴い、各種事業、特にコイルセンターは効率化を進めなければならない。昨年にマツダスチールと紅忠サミットコイルセンターを事業統合した。今後も合従連衡は必要だ。部分最適に取り組み、その後統合へと話が進む時が来ると考えている」
「ASEAN、とりわけタイは重要だが、安価な中国製部品が輸入され、パートナーでもあるタイ自動車部品メーカーの間で危機感が高まっている。単に価格で対抗するのではなく、品質仕様設計の変更による改善効果を日系自動車に提案する発想も必要。パートナー企業とともに意識改革をして需要を守る」
――欧州市場を捉える戦略も重要に。
「チェコにコイルセンターを構え、提携するスペインのバメサグループは欧州に10カ所のコイルセンターを持つ。当社の拠点がない地域の開拓をパートナーと一緒に考えていく。EEWはドイツに2カ所工場を持ち、バルト海に近い沿海部のモノパイル工場と内陸部の鋼管工場があり、両工場の活用を検討する。大型の構造物に対応でき、大型クレーンや搬送用の大型車両、鉄道輸送インフラ、岸壁を持つので10ー15年先を見据えながら次の柱を考える。エネルギー安全保障に端を発してラインパイプの需要が増え、厚板の需要が堅調に推移している。厚板を使用する需要家とのトレードだけでなく、何か協業することが出来ないか考えたい」
――アフリカに進出しているインド事業でのパートナーのバジャジグループとの協業は可能性が広がる。「バジャジが輸出する二輪車はアフリカ全土で4割のシェア、東アフリカでみると7割のシェアを持つ。将来、現地生産を始めることになれば、部品の現地調達化によるニーズが生じ、CCの機能が求められるだろう。実需を生むパートナーと一緒にコンパクトな事業から始め、大きくしていこうと思っている」
――ホルムズ海峡が開放された後、市場はどう変わっていくとみているか。
「OPECが協調減産するか、離脱したUAEがどういう対応をするか。国際需給により原油の国際相場が大きく動く。米国の掘削業者は油価の先行きをかなり慎重に見ているが、米国の掘削業者が増産に向かうかどうかで鋼管の需要が変わってくる。海峡はいずれ開放され、原油の供給が再開され、国際経済へのインパクトがやわらぐだろうが、イランの周辺国の製油所の完全復旧に数年かかる見通しであり、鋼管の需要量は思ったほど増えない可能性もあり、現時点では見通しにくい。一方で天然ガスは火力発電向けに需要が増え、開発・増産が続く。ガスタービンメーカーの受注は多く、2035年まで右肩上がりと予想されている」
――27年度開始の次期中期計画に向けてイメージする利益水準は。
「鉄鋼グループとして将来の1000億円を目標に掲げている。全社は1兆円、鉄鋼グループはその1割の貢献を目指すとして、それを達成実現するためには何が必要なのかを詰めていく。現在の事業を一つ一つ磨いていくが、各事業はフルスイングに近い状態であり、成長のために新しい事業を加えていく。米国やインドでの投資は将来に向けた大きなプロジェクトだが、さらに広い観点で鋼管、鋼材ともに現場で考え、構想を形にしていきたい」(植木 美知也)




















