「上期が219億円で、下期は一過性の要因もあって183億円にとどまり、通期で402億円となった。前期比約80億円の減益で、国内20億円、海外60億円のイメージ。国内の需要低迷はある程度織り込んでいたが、建設分野を中心に下振れた。海外での保護貿易の広がりや中国の鋼材輸出増加によって日本からの輸出が減少し、国際市況が下落した。収益影響が大きい米州は、トランプ大統領の関税政策により米国内の需要が停滞し、カナダやメキシコからの輸出にも影響した。こうした環境の中でも、社員が一丸となって取り組んでくれたことと、事業構造の多様化により402億円の利益を確保できた」
――今期は450億円への一部回復を見込む。
「国内は需要の回復が遅れているが、鋼材市況は上昇基調にある。海外について、米国は年度後半から需要が回復に転じ、在庫調整も進展し、収益が改善すると見込んでいる。8次中期での施策を実践し、450億円のセグメント利益を達成する」
――第8次中期経営計画(25-27年度)の利益目標は600億円。
「前中計最終年度の実績が479億円で、国内235億円、海外244億円だった。8次中計の策定にあたり、一過性要因を除いた実力値を450-500億円と想定。27年度目標を国内250億円、海外350億円の600億円に設定した。25年度は国内209億円、海外193億円だった。とくに海外市場において、米国の関税政策や中国の鋼材輸出などの影響が大きく広がって、日本からの輸出環境が想定以上に悪化。国内需要が想定以上に減少、事業環境が変化した。ただ国内外で、7次中計までに建材、自動車鋼板、電磁鋼板などの分野・品種でM&A、設備増強投資を実施し事業基盤を確立しており、収益化を見込む。さらに3年間850億円の成長投資計画を今期から来期にかけて本格化する予定であり、600億円達成に向けた取り組みを継続している」
――中計では経営基盤の刷新、国内市場における存在感向上、海外市場におけるインサイダー化の3つの重要戦略を掲げている。「経営基盤に関しては、権限の委譲、社内規程やガバナンスの見直しを前期までに完了した。経営判断、意思決定の迅速化が目的であり、4月に刷新した新・人事制度とともに新しい仕組みをしっかり定着させていく。基幹システムの見直しについては、先行して業務の可視化を行った。業務を棚卸し、断捨離・見直ししたうえでDX、AIを導入し、新しいシステムを構築する。JFE商事が扱う商流、商材のフローチャートを作成し、改善すべき課題も整理した。今期は、整理された課題の解決策を探る実行フェーズへうつり、3割程度を目標に業務を削減していく。社員が時間や気持ちに余裕をもって仕事に取り組む環境を整備し、新たなビジネスの創出などに充ててもらう」
――人事制度は、いかに評価の納得性を高め、働き甲斐につなげていくかがテーマとなる。
「事業環境がこれまでにないスピードで変化し、国際情勢の不確実性も高まっている。AIの急速な進歩によって仕事の進め方自体も大きく変わろうとしている。これまでの延長線上ではない、主体的な判断や行動力が求められており、従来の年功序列型の制度や固定的な評価からの転換が必要になっていた。そこで成果と発揮能力に応じてメリハリをつけた評価に見直し、評価ポイントも明確化。『何をすれば評価されるのか』を明確にすることで納得性を高め、働きがいにつなげることを目的とし、資格に応じて求められる役割や能力もはっきりさせた」
――新・人事制度の仕組みを。
「資格制度、評価制度、賃金制度で構成し、それぞれが連動することで社員の役割・評価・処遇が一貫してつながる仕組みにした。期初に設定した業務目標の達成度合いを評価基準とする『成果評価』、目標達成に向けた行動を通じて発揮された能力、プロセスを評価する『能力評価』があり、二つを掛け合わせた『総合評価』を資格制度や賃金制度の判断材料とし、「成果評価」を賞与の判断材料とする」
――新制度の定着も課題となる。
「適正な目標設定と的確な評価が不可欠で、上司と部下のコミュニケーションがとても重要になる。部長、室長には部下を指導・育成し、公平に評価することが求められる」
――鉄鋼市場の構造変化が加速している。8000万トンあった国内需要が5000万トン前後に縮小し、さらに4000万トン台前半に減少する可能性が指摘されている。まず国内戦略から。
「JFEグループの中核商社として、数量にこだわりつつ、付加価値を高めることで存在感の向上を図っていく。同時にコスト低減と効率化を進め、収益構造を筋肉質にしていく。加工・物流拠点については、JFEグループの枠を越えて設備の再編・集約し、最適化を図っていく」
――グループ会社の機能強化にも取り組んでいる。
「建設・土木資材を扱うトーセンの子会社で、青森県の鉄骨ファブリケータ―、三輪鉄建が本社隣接地に新工場を建設し、二次加工の最新鋭設備を導入した。トーセンは東北、北信越に数多くの加工拠点を構えており、三輪鉄建の機能も活かしながら、東北エリアの需要を捕捉していく。ちなみに三輪鉄建の新工場の鉄骨には、JFEスチールのGXスチール『J-GreeX®』を採用している」
――JFE商事秋田オフショア・マテリアルズを設立した。
「洋上風力発電向けの地元の天然石とJFEスチールの人工石材を材料とした洗堀防止材の製造販売会社で、県内の石材、建設、銀行との合弁で昨年5月に設立した。地球温暖化対策ビジネスの新たな挑戦ではあるが、洋上風力以外の分野でも地元と連携し、貢献していく」
――海外戦略については。「鋼材輸出環境が厳しくなっているため、日本からの輸出については内容を変えていく。海外は、北米、豪州、インド、欧州を重点地域と位置付けており、M&Aや事業投融資によって加工・物流拠点を拡充しながら、インサイダー化による現地完結型のビジネスを増やしていく」
――北米はインサイダー化を加速している。
「トランプ大統領の政策が揺れ動くため大型投資は見極めが難しいが、加工機能強化など高付加価値化、収益構造改革につながる投資を進めていく。ターゲットの一つである薄板建材分野は、CEMCOに続くStudcoの買収によって品種・分野が広がった。両社の連携シナジーを追求し、付加価値を高める方向でインサイダー化を追求する。電磁鋼板はメキシコとカナダの事業会社でモーターコアを製造して米国に輸出しているが、トランプ政権によって50%の関税が課せられている。USMCA(米国・メキシコ・カナダ自由貿易協定)は再交渉のタイミングを迎え、米国向けの規制が強化される可能性もあり、米国内での加工についても検討していく」
――JFEスチールが出資するカリフォルニア・スチール・インダストリーズ(CSI)との連携は。
「米国JFE商事は西海岸を拠点に事業を展開しており、ロスアンゼルスでは溶接鋼管メーカーのVEST、鋼管流通のケリーパイプがビジネスを展開している。CSIは、西海岸唯一の熱延・冷延・メッキ鋼板のサプライヤーでVESTやCEMCOにとっても重要なサプライヤーである」
――豪州、欧州は。
「豪州は、アジアに比べて市場が安定しており、投資環境も整っている。Studcoの豪州拠点を活用しながら薄板建材ビジネスを拡充していきたいと考えている。欧州はセルビアに建設した電磁鋼板の加工・販売拠点の設備が稼働を開始した。セルビアは治安が良く、政府支援もしっかりしており、工場は幹線道路に面し、EUやアジアとのアクセスも悪くない。EUのCBAM(炭素国境メカニズム)の本格導入の市場への影響なども見ながら、着実にビジネスを広げていきたい」
――インドも注力市場となる。
「一つはJFEスチールのインド拡大戦略と同期化し、インド全体でグループシナジーを最大化する役割を果たす。もう一つはJ商独自のビジネスを強化していく。アルミ脱酸材メーカーへの出資は一例だが、資機材・原材料ビジネスも拡充していきたい。インサイダーとしてのビジネスチャンスを創出するため、本年4月にインド事業推進チームを立ち上げた」
――バングラデシュに拠点を設けた。
「ダッカに駐在員事務所を4月に開設した。国内需要は800万トン程度だが、2035年には1700万トン規模への拡大が見込まれている。インドからの出張ベースで対応してきたが、インサイダーとしての視点で市場開拓のチャンスを探っていく」
――鉄鋼業界は、高度循環型社会への転換への対応も迫られている。
「JFEスチールが西日本製鉄所倉敷地区で稼働させる大型電気炉に対応する鉄スクラップなど高級冷鉄源のサプライチェーンを強化していく。併せてJFEスチールが製造するGXスチールの販売、市場への浸透を図っていく。スクラップは取引先のリサイクル企業とも連携しながら、必要な品質のスクラップを供給できる体制をつくり、鉄スクラップの回収・集荷、選別、在庫、物流機能を構築していく」
――環境商材の取り組みは。
「スクラップ以外にも、バイオマスや廃タイヤ、新燃料など、取り扱いを増やしていく」(谷藤 真澄)























