鉄鋼新経営 厳しさ増す市場に対応/日本冶金工業社長/浦田 成己氏/高機能材 販売基盤を強化/一般材、きめ細かい対応で拡販

鉄鋼新経営 厳しさ増す市場に対応/日本冶金工業社長/浦田 成己氏/高機能材 販売基盤を強化/一般材、きめ細かい対応で拡販
――足元の需要環境から。

「総じて前年から底を脱した。とくに半導体関連の一般材(汎用ステンレス鋼板)は昨年末ごろから、高機能材は昨年から受注増に転じ、足元は好調だ。高機能材は石油ガス関連が好調で、アメリカのほか、インドの需要家を経由した中東向けも案件が出てきた。一方で、2年前まで活況だった中国の太陽光パネル製造装置向けは依然として停滞感がみられる。ただ、インド向けの小規模生産の動きもあり、今後の需要増に期待したい」

――高機能材を販売する海外について。

「最大の市場である中国に次いで需要拡大が見込まれるインドで昨年、現地法人を開設した。インドは大気汚染対策設備向けが旺盛で、中東へのプラント輸出も見込まれる。将来的にはインフラや消費財などの需要も期待できる」

――昨今の中東情勢の影響は。

「現時点で、生産への大きな影響は出ていない。一方で副資材の価格高騰やエネルギー価格上昇が続く。大江山製造所では高品位原料や廃プラスチックの活用を、川崎製造所はステンレススクラップなどの使用拡大をそれぞれ進め、生産性の向上、コスト削減に取り組んでいる。それでもコスト増に対する自社での吸収は限度があり、販売価格へ転嫁せざるを得ないと認識している」

――川崎製造所(川崎市)の稼働状況を。

「足元の操業水準は8割弱。昨年末に火災が発生した冷間圧延機については、年内の復旧再開、早期の戦力化を目指している。現在は既存の冷間圧延設備も活用し、顧客に供給している」

――中国・台湾材のアンチダンピング(AD)調査が進む、ニッケル系冷延ステンレス鋼板の輸入材について。

「昨年7月のAD調査開始以降も高水準の流入が続き、生産と受注減少につながった。AD措置が講じられた際は、国内メーカーとして顧客にしっかりと供給責任を果たしていく。足元では中国と台湾からの入着が減る一方で、調査対象国以外のさまざまな国からの入着が増えている。中国材・台湾材以外でも国内ステンレス鋼産業への被害が確認された際には、対処していくべきだと考えている」

――輸入材への対策は。

「納期や品質の安定、アフターサービスなど非価格での差別化に加えて、輸入材で代替が難しいニッチな鋼種とアイテムの比率を高めていく必要がある。価格については適正かつ透明性を示すことで、お客さまの理解をいただき、国内専業メーカーとしての存在感を示していきたい」

――新中計で高機能材比率を現行比1・5倍の6割に高めた。

「これまでの高機能材の定義・基準は、30年以上前に決めたものが基本だった。この間に取り巻く環境が変化したことから、時代に合わせたものとするために高機能材の対象アイテムを見直すこととした。既存の高機能材の受注は底堅く、高機能材の適用範囲を拡大することで、販売基盤を盤石なものとしたい。一般材についても、輸入材にはできないようなきめ細かい対応や、参入障壁が高い鋼種などの潜在能力を持っている。販売子会社のナス物産、クリーンメタルとともに戦略を立てながら国内販売を強化していきたい」

――多彩な需要対応を目的に、生産体制の構築を進める。

「製品高度化への危機感から中計期間の設備投資を決めた。高機能材の分野では欧米に加え、近年は中国やインドなど後発メーカーが技術力を着実につけ競争が激化している。加えて素材に求められる内容は高度化してきた。今年は水素環境の材料評価試験場を開設するなど、研究開発へ投資を進めているが、製造設備にも手を加える必要がある。連続鋳造設備を更新し、板厚100㍉超の極厚品の製品供給を進める。加えてナス鋼帯を通じた極薄品など、高機能材の製造可能板厚を広げて需要をさらに取り込む」

――中国南京鋼鉄とのJVの現状について。

「太陽光パネル製造装置向けの需要低迷で生産量を落としている。足元では広幅圧延設備を有効活用して、さまざまな合金の圧延試験を行っている。引き続き、広幅薄肉化を進める」

――グリーンステンレスの提供を開始する。

「カーボンフットプリントなどの提供開始に向けた準備を粛々とやっているところだ。高機能材の一つとしてラインアップし、中計期間中の生産に向けて準備を行う」

――原料製錬工程の「カーボンレス・ニッケル」の現状を。

「大江山製造所の2025年の都市鉱山の利用比率は60%だった。その他の施策と組み合わせて、経済合理性や生産性などの課題をクリアしながら『カーボンレス・ニッケル』の実現に向け、取り組んでいるところである」

――28年に、川崎製造所で二次溶解炉(スラブ型再溶解設備〈ESR〉)を導入する。

「研究開発目的で導入を決めた。高機能材の研究開発では、開発したものが想定外の分野で活用されることが多々ある。具体的なターゲットを見込むのではなく、ラインアップを拡充し、将来の需要をキャッチするために二次溶解にチャレンジする。長期的には航空、宇宙、超電導分野への挑戦などさまざまな可能性を探る」

――中長期の展望を。

「ステンレス鋼や高機能材は、サステナビリティ社会に貢献できる素材であり、脱炭素社会を見据えた新たなニーズなど、ますます注目されこの先もビジネスチャンスがあると捉えている。一時に比べて脱炭素に向けた潮流はトーンダウンしているが、太陽光発電関連設備や地熱発電など再生可能エネルギー分野で、当社の高機能材の採用が増えている。引き続きしっかりと需要を捕捉していきたい」(北村康平)

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