「一つの基準とみていた1300億円を下回る結果となった。事業環境が悪化し、素材系の数量が減少した。これまでは数量回復による改善を前提としていたが、全国粗鋼生産が8000万トン強まで減少する中で、今後大きく回復することは見込みにくいとの認識に至ったのが25年度だったと思う。これからは価格、コストにより重点を置いた取り組みが中心となる。出銑の下方弾力性を持ちながら、価格の決め方も含めて改善していく必要がある」
――価格の決め方というのは。紐付き需要家向けの主原料コストは原料価格の変動による販売価格の変更をフォーミュラ化しているが。
「主原料コストはフォーミュラ化しているが、労務費やその他の物資についてコスト変動を転嫁することができていない。今の収益上のネックとなっており、対処を進めなければならない。購入していただく方にも、透明であり、価格交渉の前にある程度価格の見通しを立てることができる仕組みに変えていきたい。当社だけでなく、お客様も事業を継続していくために価格問題にどう対処していくかというのは大きなテーマだ。長年の議論ではあるが、単に個社のコストをお客様に渡していくというのではなく、大きなサプライチェーンの中でコストを認識し、第1走者、第2走者、第3走者へと各自のマージンを損なわないようにコストを渡していく。サプライチェーン全体の共通課題としてアプローチを考える必要がある。当社は原料や資材の買い手でもあり、当社としても値上げをしっかりと受け止め、自助努力を継続し、コストを販価に転嫁していく。最終商品の価格が上がり、賃金が上がっていくサイクルが止まらないようにしていく。成長とはそういうことと思う」
――春に鋼材値上げを打ち出した。26年度の最大の課題は鋼材価格の改善と明確に打ち出しているが進捗は。
「市況分野についてトン1万円以上上げていくが、主原料だけでなく副資材や物流費、外注費などコストが大きく上がっているとともに、昨年に価格が下がったものもあり、1万円の値上げでは足りない。低下したマージンを戻すだけでなく、改善していかなければならない。すでに段階的に値上げが進んでいるが、1万円以上の値上げを早期にしっかりと浸透させる必要がある。需要が厳しい中での値上げであり、お客様に丁寧に説明し、理解を得たいと考えている」
――鉄鋼の市場環境は厳しい状況が続く。
「国内の自動車生産台数は850万台程度で前年並みを予想している。中東向けの自動車の生産が少し減っているようだが、市場は変わる可能性があり、横ばいでみている。建設分野も人手不足など状況は変わっていない。中国は供給面で構造的な変化が起きない限り鋼材の大量生産・大量輸出が続くとみられ、輸出環境は厳しいまま。国内外ともに需要の伸びは期待できず、粗鋼生産量の予想は590万トンと低くとどまる見通しである。主原料以外で固定費が上がっているが、大半が転嫁できておらず、積もり積もって収益が低下している。繰り返しになるが、主原料以外のコスト転嫁が課題となる」
――メタルスプレッドが25年度に悪化し、今年度も値上げを進める中で悪化が続く見通しだが。
「前年度は、メタルスプレッドが下期に大きく悪化した。今年度の鋼材の値上げを着実に進め、スプレッドを改善していく」
――神鋼鋼線工業の完全子会社化を決めた。背景、狙いは。「素材全般にいえることだが、将来の絵をどう描いていくかが大きなテーマだ。神鋼鋼線工業は自動車向けばねも製造しているが、国内の建設向けが中心であり、市場規模の縮小という構造的課題があると認識している。線材を加工して製品を造り上げる世界最高峰の技術を多く持っており、これを最大限に生かしながら、ロープや撚線などの製品を他素材や事業と組み合わせることで発展させていく。また、単独では難しい分野については、当社の機械事業や建機事業とも連携し、新しい価値・サービスを考えていく。材料の供給元である当社が主導してリソースを有効活用し、事業の拡大を図っていくことが効果的だ。用途拡大や海外展開など成長に向けた取り組みに期待している」
――中東情勢の影響を業績予想に織り込んだ。コストや需要面だけでなく、製鉄所など製造面でも影響を受けるのでは。
「調達面はアルミ関連事業で原材料輸入があり、また原油市況高騰は船舶用燃料などコスト面に大きく影響し、想定リスクを年間200億円程度と概算し、上期末まで継続する前提で100億円程度を織り込んだ。中東情勢含むさらなる一過性影響がなければ連結経常利益予想は1350億円と一定のラインとみる1300億円を超えるが、今は市場の動向が読めず、慎重に構えている。資材が足りずに当社が製造できない事態が生じる前にお客様の方で影響が表れる可能性がある。それぞれの事業で製造に必要な資材が不足することはあり得るが、日々在庫や調達の状況を確認しており、至近の生産で影響を受けることはない」
――アルミ板について需要が回復傾向にあるようだが。
「自動車やパネル向けは大きな伸びは見込みにくく横ばいとみているが、半導体製造装置向け厚板は回復が明確に見え始めている。半導体分野の中で製造装置はサプライチェーンの後方に位置するが、需要が高水準で推移している。缶材は増加を見込み、ディスク材も堅調に推移するとみている」
――アルミ板事業の価格改定はどのように進めていくのか。
「地金だけでなく、電気代やガス代などもフォーミュラ化が進み、総じて言えば価格の改定を粛々と行うことができる仕組みに変えてきている。価格改定は比較的浸透してきており、生産体制を整え、数量を確保していけば、納得できる結果を得られるだろう」
――真岡製造所のアルミ板の生産体制の見直しについては。
「需要に合わせて、前提となる生産数量を少し調整する必要がある。不要な固定費は落としていく。設備を止めるのではなく、外注費や労務費、人員配置など見直す余地があり、歩留まり改善や生産性改善を続ける」
――アルミ関連で大型投資の計画はあるか。
「今期は、アルミ関連で目立った投資は計画していない。老朽化設備の更新など、維持更新投資を中心に進めていく」
――アルミ押出事業の今後の方向性は。「押出は大きなテーマの一つだ。収益改善に向けた取り組みは進めているが、それ自体がゴールではなく、その先の成長をどう描くかが重要である。これまで北米事業の収益改善を優先して取り組んできた。今後は押出事業全体の在り方について考えていく」
――アルミサスペンション事業の競争力をどう見るか。
「サスペンションはもともと競争力がある。北米事業の生産性も上がってきた。国内事業は収益力があり、さらに磨き込めば高い収益力を持つ事業として展開できる。自動車メーカーにとって当社のアルミサスペンションは重要な位置付けにあると認識しており、事業の柱であり続けると考えている」
――航空宇宙・防衛分野でのアルミ、チタンの成長期待は。
「航空需要が伸びていることは明らかであり、防衛も伸びるだろう。当社のアルミ鋳鍛やチタンが各用途でどこまで機能し、価値を発揮できるかが勝負となるが、多くのチャンスがある。競合が多いわけではなく、技術や品質面で評価を得ており、生産性改善も含め成長余地は十分にある」
――中国のアルミ板合弁事業の状況は。
「自動車市場が良くないため、当初の想定とは異なる状況にあるが、需要が戻った時にしっかりと収益を維持・拡大できるよう体制を整えていく」
「中国へは従来、韓国合弁会社からで母材を供給していたが、中国内で完結する体制に切り替える。中国で合弁事業を行う理由の一つにリサイクルもある。自動車メーカーなどの承認を得ながら地産地消の体制に移行していく。現地でリサイクルスキームを構築し、それを強みに自動車メーカーなどに提案する。低炭素対応やクローズドループリサイクルの要請に応えられる体制を整えたい。韓国合弁の母材生産能力の活用については引き続き検討している」
――機械系事業における26年度の見通しは
「機械は23、24年度と収益が順調に拡大し、25年度は収益性の高い大型プロジェクトもあって、とりわけ高い収益となっている。26年度は減益予想としているが、24年度を上回り、誇れる数字ではある。エンジニアリングは複数の大型案件の受注を控え、受注高は高水準にある。建機はエンジン認証問題からの回復基調があり、中国・北米・欧州向けで数量増が期待できる」
――機械事業部門の組織を変えた狙いは。
「販売や生産ではなく、製品メニュー単位に組織を変え、マーケットの変化に対応しやすい体制とした。機械事業では、事業ポートフォリオをいかに競争優位なものに見直していくかが重要であり、足元では、エネルギー転換を見据えた新たなチャレンジが必要になってきている。組織改正には事業ポートフォリオの見直しを進める強いメッセージを込めており、人員配置も合わせて見直し、攻めのフォーメーションを組んでいる」(植木美知也、増岡武秀)















