2025年大阪・関西万博開幕
2025年大阪・関西万博が大阪市の人工島、夢洲(ゆめしま)を会場に4月13日開幕した。開催期間は10月13日までの184日間。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに約160の国や地域、国際機関が参加する。万博会場は「未来社会の実験場」としても位置づけられており、ロボットやAI(人工知能)、カーボンニュートラルなどに関する最先端技術の展示や多彩な催しが会場を彩る。
地政学リスクが広がる今、来場者に未来を感じてもらい、世界を結ぶ希少な場としても期待が高まっている。
「未知との出会い」最新技術集結
経済産業事務次官 飯田祐二氏
経済活性化の起爆剤に 日本の魅力 世界に発信 ビジネス拡大 絶好の機会2025年大阪・関西万博は、開催の準備段階からこれまで、人手不足による工期の遅れや建設費の高騰といったマイナス面が時に注目されてきたが、日本の魅力などを世界に発信する絶好の機会であり、日本経済や地域経済の活性化、ビジネス機会の拡大などの起爆剤としても大きな期待がかかる。大阪・関西万博の見どころや万博の波及効果などについて、旗振り役である経済産業省の飯田祐二事務次官に聞いた。
――2005年「愛・地球博」以来、20年ぶりに日本で開催する国際博覧会となる。
「18年に日本が誘致に成功し、ついに開幕を迎える。大阪・関西万博には前回の『愛・地球博』を上回り、日本開催としては過去最多となる世界158カ国・地域、7国際機関が参加する。万博のシンボルとなるのは、世界最大の木造建築物としてギネス世界記録にも認定された大屋根リング。地政学的リスクが強まる中で世界の一体感をもたらすものだと期待している。大屋根リングの内側には海外パビリオンやテーマ館など、リング周辺には日本館や民間企業による多くのパビリオンが立ち並び、万博会場はまさに『未知との遭遇』。世界中の国々との思いもよらない出会いや発見ができる場として、子供から前回の大阪万博を体験した方々まで幅広い世代に楽しんでもらいたい」
――会場建設の工期遅れなども懸念されていた。
「海外パビリオンについては各国が独自設計するという形を取っており、これは1970年の『大阪万博』以来となる。工期遅れなどが懸念されていたが、多くの関係者のおかげでめどが立った。海外パビリオンは各国の特色ある建築や展示が見どころの一つ。会期中には参加国をたたえて参加者の文化に対する理解を深め、国際親善の増進に寄与するためのナショナルデー(国・地域)、スペシャルデー(国際機関)も設けられている。オーストリアのウィーン少年合唱団によるコンサートやイタリア・バチカン館でのカラバッジョ作『キリストの埋葬』(バチカン美術館所蔵)の展示をはじめとする国際色豊かなコンテンツを通じ、来場者は世界中の文化や価値観を体験することができるだろう」
――経済波及効果は。
「経済波及効果は経済産業省の試算で約2兆5000億―2兆9000億円、入場者数は約2820万人を見込む。日本国際博覧会協会によると前売りチケットの販売枚数(3月12日時点)は今のところ約821万枚だが、学校の修学旅行や旅行会社が募集している団体旅行などでさらに200万枚ほど増えて1000万枚を超える見通しとなった。EXPOアリーナ、EXPOメッセなどでコンサートや相撲といった多彩な催しが行われるほか、地方と連携した『万博プラスワン』という取り組みにも力を入れている。万博会場を活用した地域プロモーションや外国人をはじめとする来場者の全国への誘客促進、国際交流の拡大などにより、万博を通じた地方創生も目指していく」
――ビジネスマッチングの場としても期待がかかる。
「会場内外で多彩なビジネス機会を提供することも万博の魅力の一つだ。前回のドバイ万博では海外パビリオンの中に商談スペースを設けられており、今回の万博でも万博開催に合わせて参加国がビジネスミッション団を派遣することを検討している。万博は日本企業にとって海外への販路拡大や新たなビジネスパートナーを見つける絶好の機会であり、自治体にとっても海外企業を地元に誘致できるチャンス。開催期間中には日本の中堅・中小企業の海外展開を支援するためのカンファレンスや商談会、ビジネス交流会なども検討している」
――最先端技術も大きな見どころとなる。
「万博会場は新技術を先行体験できる『未来社会ショーケース』。例えば石黒浩氏が手掛けるシグネチャーパビリオン『いのちの未来』のアンドロイドだったり、視覚障害者を安全に誘導するAIスーツケース、パソナパビリオンの動く1PS心臓、大阪府・市が出展する『大阪ヘルスケアパビリオン』の人間洗濯機などが展示される」
「さらにグリーントランスフォーメション(GX)に向けたさまざまな技術も集結する。水素混焼発電で万博会場に電力を供給したり、シャトルバスが到着する乗り場の屋根には世界最大の『ペロブスカイト太陽電池』が設置されている。CO2を吸収するコンクリートを使用したドーム、会場内の生ごみからのバイオガス発電、CCS(CO2を分離・回収して地中に貯留する技術)の実証など、万博に行ってGXを実現するためのさまざまな技術を先行的に体感してもらいたい」
(早間 大吾)
理念と技術の粋「大屋根リング」
大阪・関西万博の会場のシンボルとなるリング状の木造建築物、「大屋根リング」。大阪・関西万博会場デザインプロデューサーで建築家の藤本壮介氏により構想された「多様でありながら、ひとつ」という会場デザインの理念を表した会場のシンボルとなる建築物で、2023年6月末に組み立てを開始し工事を進めてきた。
1周約2キロ、高さがおよそ20メートルの世界最大級の木造建築物となる。日本の神社仏閣などの建築に使用されてきた伝統的な貫(ぬき)接合に現代の工法を加えて建築しており、会場の主動線として円滑な交通空間であると同時に、雨風、日差しなどを遮る快適な滞留空間として利用される。
大屋根リングの屋上からは会場全体をさまざまな場所から見渡すことが可能で、リングの外に目を向けると瀬戸内海の豊かな自然や夕陽を浴びた光景、大阪の街並みなど、海と空に囲まれた万博会場の魅力を楽しむことができる。
15のアトラクション織りなす未来体験
2025年大阪・関西万博を運営する日本国際博覧会協会と12企業・団体で出展するパビリオン「未来の都市」。長さ約150メートル、展示面積約3300平方メートルと大阪・関西万博の中でも最大規模のパビリオンで、クボタや神戸製鋼所などが参加。博覧会協会が主体の「共通展示」とあわせ15のアトラクションを展開し、2025年より先の未来が体感できる。パビリオンは「モアレ」と呼ばれる複雑なしま模様を特徴的な外観を持つ。昼間は白色、夜間はLED照明でオレンジや紫などさまざまな色に変化していく。大阪湾を臨む万博西側に建設し、リサイクル可能な鉄骨やTMトラスなどを採用した。
未来の都市パビリオンを設計した建築家の岡崎恭子氏は「パビリオンのテーマである『Society 5・0の未来社会』のワクワクする出会いや夢、そして持続可能な未来に向けたメッセージも感じとっていただきたい」と話す。
リユースマッチング事業
大阪・関西万博の取り組みとして注目が集まるのがリユースマッチング事業だ。2025年日本国際博覧会協会が主催する未来社会ショーケース事業の「グリーン万博」において、万博閉会後に発生する建築物やアート、建材・設備、什器・備品などの資源の有効利用を図り、サステナブルな万博運営を目指す。「ミャク市」で資源循環
大阪・関西万博における会場資源のリユースのためにウェブシステム「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」を立ち上げ、需要と供給をマッチングさせるサービスを提供する。大阪・関西万博を契機とし、今後の国内全体の施設設備のリユースの推進と、産業廃棄物の削減やサーキュラーエコノミーの実現に向けて取り組む。施設活用入札 閉会後に公募
各パビリオンや大屋根リングなどの主要施設については「ミャク市!」上に問い合わせ窓口を設置し、需要家候補からのヒアリングを行うとともに、建材・設備などのリユースについては「ミャク市!」上の入札システムで公募を行う。万博のシンボルである大屋根リングなどもリユースマッチングの対象となっている。企画・運営にあたっては大和ハウス工業やTREホールディングス、石坂産業、大栄環境、JEMSなどが協賛する。国内では個人が簡単にモノの売り買いをするフリマサービスが定着する一方、資材などのリユースマッチングはほとんど行われていない。同協会は「いわば実験的にリユースマッチング事業を行い、将来的に同様な取り組みが盛んになれば事業採算性が向上することにより、今後目指すべき循環経済(サーキュラーエコノミー)に近づく」と期待する。
高所の設備や資材などの解体に足場が必要となり、リユースのための解体工事が高額になるケースがあるほか、解体費用の占める割合が高くなる安価な資材、リース建材を使用する建物などリユース対象外と判断した資材もあるが、「これらの課題を明らかにすることも大切になる」(同協会)と話す。
別子銅山を表現 植林を通じ学ぶ
住友館、森と共生
住友金属鉱山や住友電気工業、住友化学、住友商事などの住友グループで構成する住友EXPO2025推進委員会が出展する「住友館」。建築デザインは別子銅山(愛媛県新居浜市)をもとに連なる山々のシルエットを表現し、住友グループが保有する「住友の森」の木を活用している。別子銅山は江戸時代に住友家が開坑し、以来住友グループの発展を支えてきた。「一本一本のいのちを大切にしたい」という思いから、住友館には端材を出さない合板工法を採用した。
パビリオン内の展示体験では、参加者が本物の植物やデジタル技術などを駆使し再現した森の中をランタンを片手に巡る。巨大な立体映像装置と風やミストで演出する「誰も知らない、いのちの物語」や植林体験を通して子供たちが環境のことを考えるきっかけを提供する。体験で植えられた苗は別子銅山の伐採跡地に移されるという。
「リボーン」テーマ ヘルスケア展示
大阪の知恵結集
大阪ヘルスケアパビリオンは「REBORN」をテーマに、産官学連携でオール大阪の知恵とアイデアを結集して「いのち」や「健康」の観点から近未来の暮らしを体験できる。期間中は府内の中小企業440社以上が出展し、毎週展示が入れ替わり技術力や魅力発信を行う「リボーンチャレンジ」も実施。各社の新技術や新製品を披露する。主な展示体験の一つである「リボーン体験ルート」では「カラダ測定ポッド」を使って、「目」や「髪」「心血管」など、7つの項目を測定する。そのデータを基に生成した25年後の姿のアバターに出会い、その後にミライのヘルスケアや都市生活を体験できるブースをめぐることで、新たな自分へと生まれ変わるきっかけを提供する。大阪の食文化を発信する「ミライの食と文化」ゾーン、ミライのエンターテインメントが体験できる「XD HALL」なども展示する。

















































